たんぽぽ法律事務所

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1 1997年10月某日午後6時30分、

隆さん(仮名)は、長女(8歳)とともに、

A病院分娩室近くで双子の我が子達の誕生を待っていた。

双胎妊娠はハイリスク妊娠とされているが、

妻美奈さん(仮名)は、34歳、健康そのもの、

A病院は都内でも産科専門病院として著名な病院であり、

隆さん自身も長女もここで生まれた。

何の心配もない

−隆さんは無心に我が子の誕生を待ちわびていた。

ビデオを取りに自宅に帰りA病院に戻った午後7時40分、

既に我が子達は誕生していた。

 

しかし、その時既に美奈さんには大出血が始まっていた。

分娩24分後までにZさんの出血量は1600CCに達しており

(分娩後2時間までに500CC以上の出血がある場合を「異常出血」という)、

輸血が開始された分娩2時間半後には、

出血量は3000CCを突破し、脈拍は150を超え、

分娩3時間半後、出血量は約5000CCにも達した。

 

午後11時30分、救急車到着。

隆さんも同乗して、近くの他病院へ転送。

 

しかし、出産後わずか7時間半経過後の午前2時50分、

美奈さんは帰らぬ人となってしまった。

午前6時半頃、美奈さんの遺体の傍らで、呆然自失でいる隆さんを、

そばで事態の説明をするA病院の産科部長医師の言葉が素通りしていった。 

しかし、不思議と「羊水塞栓」「DIC」という難解な医学用語と

「不可抗力だった」との説明の趣旨だけが印象に残った。

 

美奈さんの遺体は、行政解剖に付され、

死因は「出血性ショック」、

肺の羊水塞栓症は組織学的に確認されない旨の所見

が死体検案書に記載された。


2 1998年3月、隆さんの医療相談を受け、

もう一名の医療問題弁護団団員弁護士と証拠保全を受任した。

証拠保全を経由して、

A病院との交渉開始することになった第1回のA病院側の事情説明の席上、

A病院側はやや曖昧ながら輸血措置の遅れを認め

更に同席したYさんの質問を受けて、

もしA病院に麻酔科専門医がいたならば、

早期に外科的処置を行えた等

事態は違う展開をした可能性があった旨認めた。


A病院代理人との交渉と並行して、

和解交渉の経過及び意味、そしてYさんの様々な苦渋、

残された子供達の育児の問題等、

隆さんと我々弁護士とは、一つ一つ、法的解決だけでなく、

心と現実問題の解決についても、何度も話し合いを重ねた。


3 1999年11月、事件はA病院側が全面的に責任を認め、

裁判を提訴することなく、 交渉において、

5000万円の和解金を支払うという形にて法的解決をみた。

この日A病院の一室で、美奈さんの遺影を傍らに置いて、

和解の調印式が行なわれた。

 

以下は、隆さんが、院長はじめA病院関係者を前に、

恨みででも糾弾でもなく今までの思いを人間として聞いていただきたい

静かに語った言葉である。

 

  早くもあったが、同時にとても辛い2年間でありました。

  女性だからこその出産の喜びを味わいながら、

  女性だから亡くなってしまった妻が不憫でなりません。

 

  子供を育て上げる事が妻への一番の慰めとも思いますが、

  子供の成長を妻に見せてやれないもどかしさや、

  母親と触れ合う事ができない子供達の事を考えると、

  本当に悔しく悲しいばかりです。

 

  無理と分かっていても、

  妻がかえってこなければ絶対に心は癒されません。

 

  しかし、担当医であった先生個人への悪い感情というものは

  不思議なほどありません。

  うまくいって当然、失敗すれば非難を受けるお立場は、

  大変なものと思われます。

  その後も、相当数の出産を担当されていると思いますが、

  この件が慎重さを増す結果になったとしても、

  心に重荷として残らない事を望んでいます。

 

  それよりも、

  今回の件は二重三重の緊急時への準備があれば

  最悪の事態を避けられたのではないかとの思いから、

  産科を代表するこの病院全体の問題として

  二度とこのような事例が発生しない様設備面・人員面

  ・緊急時の対応等万全の体制を整えていただく事を望んでいます。

 

 

 

【追記】

医療事故発生時期や紛争解決の経緯は違うが、

本件の相手方医療機関は、奇しくも、

当事務所の弓仲弁護士が取り組んでいた産科医療過誤事件と同じA病院であり、

紛争解決時期も重なっていた。                             弓仲弁護士の事件紹介      

その後、A病院には、専門の麻酔医が置かれることになった

とのことである。

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