日本人の健康寿命は、
男性70.42歳、女性73.62歳であるらしい(2010年)。
「健康寿命」という言葉は、
多くの日本人にとって初耳だったのではなかろうか。
それもそのはず、
厚生労働省が初めて算出してこの6月公表したからである。
「健康寿命」とは、
介護を受けたり病気で寝たきりになったりせず、自立して健康に生活できる期間をいう。
日本人は世界一の長寿国と言われて久しいが、
高齢社会を迎え、介護、年金、医療費等々
様々な問題がクローズアップされるにつれ、
昔のように「長寿」がめでたい響きを持たなくなった。
長寿と言っても何歳まで元気でいられるのか・・・と、
漠然とした疑問や不安が頭をよぎることも少なくない。
「健康寿命」のニュースは、そんな疑問や不安に答えるものだった。
平均寿命から健康寿命を引いた期間は、「健康でない期間」となりそうである。
日本人の平均寿命が、男性79.64歳、女性86.39歳であるから(2010年)、
差し引き、男性9年、女性13年は、「健康でない期間」となる。
なんだか「健康でない期間」が長いようで、「世界一の長寿国日本」が色あせてきそうだ。
(医療技術の飛躍的進歩と過剰診療)、
平均寿命だけ延びて家族や社会を圧迫している
などと批判する声もある。
しかし、日本人は、世界の中で、平均寿命だけでなく、健康寿命もトップランナーなのだ。
実は、「健康寿命」という概念は、2000年世界保健機関(WHO)が打ち出した概念である。
算出方法、時期、男女別か合計か等々の違いで
上記の厚労省の数字との単純比較はできないが、
WHOの「世界の平均寿命ランキング」(2002年度男女計)によると、
日本人は平均寿命も健康寿命も世界一なのである。
また、「健康でない期間」は、世界の国々は概ね7〜9年であるが、
日本はドイツと並んで6.9年と、世界一なのである。
誇ってよいのではあるまいか?
日本人の健康・長寿を支えてきたのは、
誰もが必要なときに必要な医療を受けられる「国民皆保険」、
小児医療から高齢者医療に至る医療制度の充実、
学校教育の充実による健康に関する知識や関心の高さ、
日本人独特の米・魚中心の食習慣などであろう。
とはいえ、厚生労働省もかけ声をかけているように
「健康寿命」を延ばして、平均寿命との間の「健康でない期間」を狭めていく努力は、
今後も必要であろう。
しかし、そのことだけに目を奪われないよう注意しなければ。
人間が病み老いるものである限り、「健康でない期間」は、決してゼロにはならない。
「健康でない期間」を安心して生きられてこそ、人は健康寿命を全うできる。

「健康でない期間」を、
より人間らしく生きられる環境と制度作りに向けての様々な努力こそが、
これからの大きな課題ではなかろうか。