労働審判で未払い残業代勝ち取る〜34号(2012年1月1日)

運送会社運転手の未払い残業代300万円を支払わせる
              − 労働審判手続で調停成立

                                   
                                                           

1 話しが違う・・・

コンテナトラック縮小.jpg

東京近県の運送会社の従業員であったAさんは、

長時間のサービス残業と上司の嫌がらせに耐えかねて、

勤続約1年半で退職した。

納得できないAさんは、退職後に当事務所に法律相談。

 

 

聞いてみると、就職時の求人票は、1日8時間労働で

「基本給(月額換算・月平均労働日数 25.0日) 

クリップボード@縮小.jpg

335,000円〜375,000円」との記載があり、

基本給(日給)は、最低でも

「335,000円÷25.0日=13,400円/日」

となるはずであった。

しかし、実際には、求人票の記載とは異なり、

「基本給」は残業代込みでの数字として扱われ、

長時間のサービス残業が常態化していた。

いくら働いても支払われるのは求人票の「基本給」のみであった。

 


2 過酷な長時間労働

運送業.jpgAさんの会社では、必ず朝7時に出勤して

朝礼に出ることが義務づけられていた。

朝礼後、荷物をトラックに積み込む作業を1〜2時間。

その後すぐにトラックで配達に出る。

 

配送先への到着時刻の厳守を求められるので、

にぎりめし弁当縮小.jpg

建前上認められている1時間の昼食休憩もろくに取れず、

おにぎりなどを食べながらの運転が日常化。

 

配達を終了して帰社した後、

荷物収納.bmp集荷してきた荷物を翌日の配達に備え整理するのも

Aさんたち従業員の仕事である。

 この作業に2〜3時間を要し、退社時刻は、

連日午後8時から午後9時になるのが常であった。

 

 

3 上司の指示

しかもAさんは、勤務初日の帰社後、運転日報に、

朝礼開始の朝7時から最終業務終了の時刻上司に叱られるA縮小.jpg

を記載して提出したところ、

上司から、

「運転日報だから、運転した時間だけを書くように」指導され、

以後、その指示通りに運転日報を記載せざるを得なかった。

すなわち、相手方の運転日報についての指示は、

@荷物をトラックに積み込む時間(1〜2時間)は記載せず、

会社を出発した時刻を記載する。

報告書1縮小.jpg

A配達・集荷作業を終え会社に戻ってきた時刻を記載する。

帰社後の翌日の準備作業時間(2〜3時間)は記載しない。

B昼休みを、正午から1時まで1時間取ったように記載する。

−というものであった。

なお、Aさんの会社にはタイムカードもなかった。

 

4 わずか1年半の未払い残業代、その額490万円!

ほぼ連日、朝7時から夜は8時〜9時まで働いていたにもかかわらず、

8時間を前提に求人票に記載された「基本給」しか支払われていなかった。

電卓A縮小.jpg

渡される給料明細には、求人票の「基本給」額を、

適当に割り振って、本給、通勤手当、みなし残業手当

などの名目の金額が記載されてはいたものの、

支払われる合計額は、何時間残業しようが、

求人票の「基本給」額「335,000円〜375,000円」

の金額だけであった。

求人票の「基本給」を基礎に、Aさんの未払い残業代を計算してみると、

わずか1年半の間で、その額は約490万円にも及んだ。

 


5 労働審判申立

Aさんは会社を相手取り、2011年4月、

地元の地方裁判所に残業代の支払いを求めて

労働審判の申立をした。


タイムカードはなく、

運転日報も上司の指示で実際の労働時間が反映されていない。携帯ピンク@.gif

実際の労働時間の証明は困難を伴った。

Aさん及び妻の記憶と

妻の携帯に残っていた夫婦間の「帰るコール」の履歴を

妻の協力で証拠化するなどして、退社時刻を推測し、

残業時間を計算しての請求とならざるを得なかった。

 

書類を持ち説明縮小.jpgこれに対して会社側は、

残業代込みの「基本給」であることを入社時に説明した、

Aさんの業務遂行が非効率的であった、

取引先からのAさんについての苦情が多かった

等々の主張をしたが、

 

労働審判員の説得もあって、

2011年8月に開かれた第3回の審判期日において、

会社がAさんに、解決金として300万円を支払うと調停が成立した。

 

実際の労働時間を証明する資料が少ないなどの困難を乗り越えて、

妻の協力を得て解決に漕ぎ着けたAさんは、闘ってよかったとの思いをかみしめた。

今、Aさんは、別の運送会社で、

出社・退社の時刻を毎日、手帳にメモしながらも、明るく元気に働いている。

手帳縮小.jpg
                      

 ひらめき 【一口知識】 労働審判制度とは?

 労働者と事業主との間で発生した労働関係に関する紛争を、

 迅速・適正に解決するために設けられた制度。

 裁判所におかれた労働審判委員会が、原則3回以内の労働審判手続期日で審理。

 労働審判委員会の構成は、裁判官である労働審判官と労使各1名の労働審判員の計3名。

 2006年4月に始まった制度。

 調停がまとまらない場合、労働審判委員会が、審理の結果をふまえて判断を下します(労働審判)。

 その判断に不服があれば、労使双方が異議申立をすることができます。

 その場合は、通常の訴訟に移行します。