たんぽぽ法律事務所

蒲公英 DANDELION 1990年7月2日設立

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運送会社運転手の未払い残業代300万円を支払わせる
              − 労働審判手続で調停成立

 

1 話しが違う・・・

東京近県の運送会社の従業員であったAさんは、

長時間のサービス残業と上司の嫌がらせに耐えかねて、

勤続約1年半で退職した。

納得できないAさんは、退職後に当事務所に法律相談。

聞いてみると、就職時の求人票は、1日8時間労働で

「基本給(月額換算・月平均労働日数 25.0日) 

335,000円〜375,000円」との記載があり、

基本給(日給)は、最低でも

「335,000円÷25.0日=13,400円/日」

となるはずであった。

しかし、実際には、求人票の記載とは異なり、

「基本給」は残業代込みでの数字として扱われ、

長時間のサービス残業が常態化していた。

いくら働いても支払われるのは求人票の「基本給」のみであった。


 2 過酷な長時間労働

Aさんの会社では、必ず朝7時に出勤して

朝礼に出ることが義務づけられていた。

朝礼後、荷物をトラックに積み込む作業を1〜2時間。

その後すぐにトラックで配達に出る。

配送先への到着時刻の厳守を求められるので、

建前上認められている1時間の昼食休憩もろくに取れず、

おにぎりなどを食べながらの運転が日常化。

配達を終了して帰社した後、

荷物収納.bmp

集荷してきた荷物を翌日の配達に備え整理するのも

Aさんたち従業員の仕事である。

 この作業に2〜3時間を要し、退社時刻は、

連日午後8時から午後9時になるのが常であった。

 

3 上司の指示

しかもAさんは、勤務初日の帰社後、運転日報に、

朝礼開始の朝7時から最終業務終了の時刻

を記載して提出したところ、

上司から、

「運転日報だから、運転した時間だけを書くように」指導され、

以後、その指示通りに運転日報を記載せざるを得なかった。

すなわち、相手方の運転日報についての指示は、

①荷物をトラックに積み込む時間(1〜2時間)は記載せず、

会社を出発した時刻を記載する。

②配達・集荷作業を終え会社に戻ってきた時刻を記載する。

帰社後の翌日の準備作業時間(2〜3時間)は記載しない。

③昼休みを、正午から1時まで1時間取ったように記載する。

−というものであった。

なお、Aさんの会社にはタイムカードもなかった。

 

4 わずか1年半の未払い残業代、その額490万円!

ほぼ連日、朝7時から夜は8時〜9時まで働いていたにもかかわらず、

8時間を前提に求人票に記載された「基本給」しか支払われていなかった。

渡される給料明細には、求人票の「基本給」額を、

適当に割り振って、本給、通勤手当、みなし残業手当

などの名目の金額が記載されてはいたものの、

支払われる合計額は、何時間残業しようが、

求人票の「基本給」額「335,000円〜375,000円」

の金額だけであった。

求人票の「基本給」を基礎に、Aさんの未払い残業代を計算してみると、

わずか1年半の間で、その額は約490万円にも及んだ。


 5 労働審判申立

Aさんは会社を相手取り、2011年4月、

地元の地方裁判所に残業代の支払いを求めて

労働審判の申立をした。

タイムカードはなく、

運転日報も上司の指示で実際の労働時間が反映されていない。

実際の労働時間の証明は困難を伴った。

Aさん及び妻の記憶と

妻の携帯に残っていた夫婦間の「帰るコール」の履歴を

妻の協力で証拠化するなどして、退社時刻を推測し、

残業時間を計算しての請求とならざるを得なかった。

これに対して会社側は、

残業代込みの「基本給」であることを入社時に説明した、

Aさんの業務遂行が非効率的であった、

取引先からのAさんについての苦情が多かった

等々の主張をしたが、

 

労働審判員の説得もあって、

2011年8月に開かれた第3回の審判期日において、

会社がAさんに、解決金として300万円を支払うと調停が成立した。

 

実際の労働時間を証明する資料が少ないなどの困難を乗り越えて、

妻の協力を得て解決に漕ぎ着けたAさんは、闘ってよかったとの思いをかみしめた。

今、Aさんは、別の運送会社で、

出社・退社の時刻を毎日、手帳にメモしながらも、明るく元気に働いている。

手帳縮小.jpg
【一口知識】 労働審判制度とは?

労働者と事業主との間で発生した労働関係に関する紛争を、

迅速・適正に解決するために設けられた制度。

裁判所におかれた労働審判委員会が、原則3回以内の労働審判手続期日で審理。

労働審判委員会の構成は、裁判官である労働審判官と労使各1名の労働審判員の計3名。

2006年4月に始まった制度。

調停がまとまらない場合、労働審判委員会が、審理の結果をふまえて判断を下します(労働審判)。

その判断に不服があれば、労使双方が異議申立をすることができます。

その場合は、通常の訴訟に移行します。

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