たんぽぽ法律事務所

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1 相続

兄弟姉妹6人が、都心繁華街近くのマンション

(地上8階・地下1階建、土地約200㎡)を相続した。

長男Xは100分の25、他の兄弟姉妹5人は各100分の15

−というXにあつい共有持分割合は、

Xが亡父の会社(A工務店)を引き継ぐことを他の弟姉妹が考慮した

遺産分割協議の結果であった。

また、約8000万円の住宅ローン残債務は、

共有持分割合に応じて各人が負担すると合意した。

2 共有マンションの賃貸経営と管理

8F  貸し室(3室)
7F  貸し室(3室)
6F  貸し室(3室)
5F  貸し室(3室)
4F  貸し室(3室)
3F  実家
2F   X家族住居
1F  A工務店
B1F 

 A工務店

地下1階・1階を、A工務店が使用し、

  2階に、長男X家族が居住し、

  3階は、両親や祖先を祭る仏壇などを置き

  子供達の誰もが自由に出入りできる実家として残した。

  以上は全て無償使用である。

  賃料収入があるのは、

4階~8階部分合計15室である。

長女Yが3階の実家に住み込んで、管理人業務を行うとともに、

毎年1月第2日曜日に共有者全員が集まり、

1年間の管理状況や収支報告がなされてきた。

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マンション賃貸事業の収支については、

管理組合として会計事務所に依頼して、1年毎に、

マンション賃貸事業の収支

(不動産収益から必要経費を差し引いた利益)を計算し、

各共有者毎に持分割合に応じた「分配金額」

を明示した「収支計算書」を送付した。

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しかし、実際には、Yが、兄弟姉妹のために、

税務上の「経費」にはならない各人のローン残債務の返済分、

固定資産税、及び各人の相続税分納金なども、

「利益」から支払ってきたために、

「収支計算書」上の「分配金額」は誰も現実には受け取らずにきたのである。

長引く不動産不況の下賃料収入が暫減する中で、

年々老朽化するマンションのメンテナンス費用等のほかに、 

「経費」に計上しないこれらの支払を滞りなく捻出し続けるには、

頭の痛いことばかりであった。

3 長男の要求と交渉決裂

Yの10年以上にわたる苦労をよそに、

新年の共有者の集まりにも欠席しがちになっていたXは、

Yや他の弟姉妹に対して根拠のない不信感を抱くようになり、

自分だけが「分配利益」を受け取っていないと言い出した。

そしてXは、代理人の弁護士をたてて、弟姉妹に対し、

「分配利益」の清算を前提にすこぶる低廉な価格で、

弟姉妹のマンション共有持分の買い取りを求めるに至った。

他の弟姉妹が、

「分配利益」の分配を受けていないのはXだけでなく共有者全員であることや

X家族及びA工務店が無償で地下1階から地上2階まで使用していること

などを指摘しても、Xは納得せず、話し合いは決裂した。

 

4 長男からの裁判提起と応訴

Xは、2006年12月、他の共有者全員(弟姉妹5名)を相手取り、

東京地方裁判所に2393万円余の支払いを求めて

不当利得返還請求及び不法行為を理由とする損害賠償請求の訴訟を提起した。

Yはじめ5名の共有者全員から依頼を受け調査に入った。

資料を調べれば調べるほど、

原告Xの言い分はあまりに身勝手であることが判明してきた。

被告ら他の共有者全員がXを排除して利益を得ているというXの主張は

何ら事実に基づかないだけでなく、

誰もがXと同様「分配利益」を受け取っていなかった。

他方、X自身、Yが管理を始めて以後10数年の長きに亘り、

   ①相続税の毎年の分納金、

②固定資産税や修繕費等のうちXに支払い責任がある部分、

③相続したローン債務のXの相続部分につき、

自らの手持ち資金では一切支払っておらず、

Yの管理するマンション賃貸事業の「利益」から、

支払ってもらってきていた。

証拠に基づく被告らのこの主張には、原告Xは反論できず、

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自らの資金では支払っていなかったことを認めざるを得なかった。

さらに、「収支計算書」を作成してきた税理士が、

被告ら申請証人として出廷し、

Xは、マンションの自己の共有持分(100分の25)を超えて、

X家族の住居及びXが社長をしているA工務店店舗等に

建物全体の3分の1(9階中の3階分)を無償で自己使用しているのであって、

マンション賃貸の収益事業には、自己の持分を一切出資していないことを指摘した。

すなわち、税理士の証言では、そもそもXには、

マンション賃貸事業収入の「利益」の分配に与る権利はないというのである。

 

Xは、10数年に亘り、

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自らが一切出資していない「マンション賃貸事業」の収益金から

自らの相続税や相続ローン債務まで

多額の支払いをしてもらってきたのは、

被告Yら他の共有者たち(弟姉妹たち)の好意・善意

によるものであることに想いを致すべきであった。

しかるに、Xは、本件の如き不当な訴訟を提起したのである。

 

 第1審勝訴と共有物分割請求訴訟の提起

東京地方裁判所は、2009年4月24日、当然のことながら、

Xの請求を棄却する被告ら全面勝利の判決を言い渡した。

しかし、Xは、それを不服として東京高等裁判所に控訴を申し立てた。

他方、紛争の早期解決を求め、Yら弟姉妹はXを相手取り、

東京地方裁判所に、

共有物の競売を命じその売得金を持分割合に応じて分割することを求める

共有物分割請求訴訟を提起した。

 

6 控訴審での和解協議

現在、東京高等裁判所では、

Xの控訴を受けての控訴審の審理を第1回期日で終結したうえ、和解協議中である。

和解協議では、

Xからの不当利得返還請求等が認められないことを前提にしつつ、

競売による分割を回避して任意売却による紛争解決を目指しているところである。

なお、Yら提起の共有物分割請求訴訟についても、

東京地方裁判所は、2009年12月18日、Yらの訴えを認容し、

競売による分割を命じる勝訴判決を言い渡した。

 

Yらは、共有物分割訴訟の判決を最後の武器にしつつも、

兄弟姉妹の紛争でもあるので、

長男Xが常識的な対応に立ち戻ることを期待して

誠実に和解協議に臨んでいる。

新年の解決を期したい。

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