こどもを怒るな、自分がこれまで通ってきた道やないか
年寄りを怒るな、自分がこれから通る道やないか
・・・90歳の伯父が聞かせてくれた言葉である。
だがしかし、思春期の子を持つ親にとっては、
この含蓄のある言葉もしばしば吹っ飛んでしまう。
思春期の子どもは、悪魔である。
キレタ時のあの目つきは一体何なのだ。
「親の敵(かたき)」でも見るようなあの目つきは!
いやいや目の前にいるのは「親」そのものなのだから、「親のかたき」ではない。
訂正する。
「親を敵(かたき)」とでも言わんばかりの敵意に満ちたあの目つき!
子は理路整然と諭すべしと言うのだが、そんな教訓は蹴っ飛ばして怒鳴る。
「親に向かってその目つきは何だ!バチが当たるぞ!」
①中学1年
「母親と 離れて歩く わが息子」(中1母)
「何しなさい いえばいうほど 逆をする」(中1母)
「母さんは 応援してるよ 弁当で」(中1母)
「お弁当 お父さんより 豪華だよ」(中1母)
・・・思えば、まだまだ可愛かった。
②中学2年生
「文化祭 見に行ったのに 知らん顔」(中2母)
「宿題は? いつも『無いよ』と 返事する」(中2母)
「あしたから 生まれ変わると ゲームする」(中2母)
「ふざけるな 起こしてやって 文句かよ」(中2母特選句)
「ファブリーズ 打ち勝つキミの 臭いかな」(中2母)
・・・この辺からだ、事態がおかしくなり始めたのは。
外出時、親子の間の距離が急速に遠ざかり、
「親子」と見られたくない「他人顔」が露骨になった。
親に対する感謝・尊敬の念が凄まじい勢いで消失した。
「嘘つきは泥棒の始まり」の説諭が効力を消失した。
ふざけるな。
にしてもあの動物臭、自分の鼻が曲がらないのか。
③中学3年生
「反抗期の 息子抱えて 更年期」(中3母)
・・・こちらの体力、気力ともに衰えを感じ始める頃である。
なのに、悪魔は体力、気力ともに日々パワーアップしていく。
ふざけるな。
④高校1年生
「平成人 アナログ母と会話なし」(高1母)
「高校じゃ まぼろしと化す お便り類」(高1母)
「口出さず 見守ることの 難しさ」(高1母)
・・・ちょっと待て、お前1人で生きてきたつもりか?
義務教育は終わった。
高校を出していただいている親にきっちり報告せんか。
返事は、「あぁ」じゃなかろうが、「はい」・「いいえ」だろ。
ふざけるな。
⑤高校2年生
「クールな君 母はもっと 話がしたい」(高2母)
「またあった! 提出期限が 過ぎている」(高2母)
「気がつけば 頭の上から 声がする」(高2父)
・・・もう、ほとんどお願い調である。
これではいけない。親の権威を取り戻さねば。
こら、立ったまま話しをするな。
頭が高い、目線が高い。親を見くだすな、いや見おろすな。
そこに正座しろ。
ふざけるな。
⑥高校3年生
「一桁だ。順位じゃないよ。・・・じゃ点数!?」(高3母)
・・・ 母はキミのお陰で成績表の見方を学びました。
「前から何位か」はさほど重要ではない、
真に重要なことは「後ろに何人いるか」だということを。
もう「勉強せよ。」とは言うまい(どうせ聞かないし)。
だがしかし、自分の食い扶持は自分で稼げよ。
じゃあな。
さて、子育て真っ最中にあるときは、怒らなければならない。
怒って怒って、初めて子は気づいていくのである。
それも、100回怒って、1回分残れば良し。
いたらない親は怒って怒って怒りまくる。
90歳の伯父の貴重なお言葉は、こうしていつも吹き飛ぶのである。