年寄りを怒るな、自分がこれから通る道やないか
・・・90歳の伯父が聞かせてくれた言葉である。
だがしかし、思春期の子を持つ親にとっては、
この含蓄のある言葉もしばしば吹っ飛んでしまう。
思春期の子どもは、悪魔である。
キレタ時のあの目つきは一体何なのだ。
「親の敵(かたき)」でも見るようなあの目つきは!
いやいや目の前にいるのは「親」そのものなのだから、「親のかたき」ではない。
訂正する。
「親を敵(かたき)」とでも言わんばかりの敵意に満ちたあの目つき!
子は理路整然と諭すべしと言うのだが、そんな教訓は蹴っ飛ばして怒鳴る。
「親に向かってその目つきは何だ!バチが当たるぞ!」
悪魔の17歳が通う学校(中高男子校)のPTA新聞で、
「子育て川柳」が掲載されていた。
悪魔に手こずる親たちのとまどいと悲哀が表れている。
紹介しよう。
「何しなさい いえばいうほど 逆をする」(中1母)
「母さんは 応援してるよ 弁当で」(中1母)
「お弁当 お父さんより 豪華だよ」(中1母)
・・・思えば、まだまだ可愛かった。
「宿題は? いつも『無いよ』と 返事する」(中2母)
「あしたから 生まれ変わると ゲームする」(中2母)
「ファブリーズ 打ち勝つキミの 臭いかな」(中2母)
・・・この辺からだ、事態がおかしくなり始めたのは。
外出時、親子の間の距離が急速に遠ざかり、
「親子」と見られたくない「他人顔」が露骨になった。
親に対する感謝・尊敬の念が凄まじい勢いで消失した。
「嘘つきは泥棒の始まり」の説諭が効力を消失した。
ふざけるな。
にしてもあの動物臭、自分の鼻が曲がらないのか。
B中学3年生
「反抗期の 息子抱えて 更年期」(中3母)
・・・こちらの体力、気力ともに衰えを感じ始める頃である。
なのに、悪魔は体力、気力ともに日々パワーアップしていく。
ふざけるな。
C高校1年生
「高校じゃ まぼろしと化す お便り類」(高1母)
「口出さず 見守ることの 難しさ」(高1母)
・・・ちょっと待て、お前1人で生きてきたつもりか?
義務教育は終わった。
高校を出していただいている親にきっちり報告せんか。
返事は、「あぁ」じゃなかろうが、「はい」・「いいえ」だろ。
ふざけるな。
「クールな君 母はもっと 話がしたい」(高2母)
「またあった! 提出期限が 過ぎている」(高2母)
「気がつけば 頭の上から 声がする」(高2父)
・・・もう、ほとんどお願い調である。
これではいけない。親の権威を取り戻さねば。
こら、立ったまま話しをするな。
頭が高い、目線が高い。親を見くだすな、いや見おろすな。
そこに正座しろ。
ふざけるな。
「一桁だ。順位じゃないよ。・・・じゃ点数!?」(高3母)
・・・ 母はキミのお陰で成績表の見方を学びました。
「前から何位か」はさほど重要ではない、
真に重要なことは「後ろに何人いるか」だということを。
もう「勉強せよ。」とは言うまい(どうせ聞かないし)。
だがしかし、自分の食い扶持は自分で稼げよ。
じゃあな。
さて、子育て真っ最中にあるときは、怒らなければならない。
怒って怒って、初めて子は気づいていくのである。
それも、100回怒って、1回分残れば良し。
いたらない親は怒って怒って怒りまくる。
90歳の伯父の貴重なお言葉は、こうしていつも吹き飛ぶのである。