自転車泥棒の「微罪処分」〜29号(2009年8月1日)弓仲

自転車泥棒の「微罪処分」

− 警察に冤罪を認めさせ、原状回復実現 exclamation×2 −

 

自転車@.GIF 1 Xさん(60歳女性)は、自分の自転車を引き取りに、

その朝駐輪した駅前の大規模駐輪場に行った。

 駐輪したあたりで、「自分の」自転車Aを見つけた。

    女性が、イライラしながらガチャガチャと、

自分の自転車を隣の自転車Aに強くぶつけながら

無理に駐輪していた。

 

その女性が立ち去った後、

はてな?A.JPG

Xさんは、自転車Aの鍵を開けようとするが、開かない。

仕方なく自転車Aを管理室にまで担いで行き、

「自転車をぶつけられたので鍵が開かなくなった」と相談した。

管理人が試しにXさんの手にする鍵を自転車Aの鍵穴にさしこんだ。

今度は、一度で鍵が開いた。

Xさんは、その自転車Aに乗って帰り、自宅の駐輪場に保管した。

2 その後、Xさんは、ぶつけられても壊れない頑丈な鍵に取り替えた。

鍵に注意.GIFある日の午後6時ころ、

Xさんは、昼間に駐輪した自転車Aを引き取りに前記駐輪場に行った。

そこで見つけた「自分の」自転車Bの駐輪番号を料金精算機に入力したところ、

駐輪料金が5700円と表示された。駐輪時間からだと100円位の筈である。

管理人に連絡し、機械ミスとして、無料で駐輪場のストッパーを開けてもらった。

だが、自転車Bの鍵を開けようとして、

鍵の形状が違うことに気づく。

先日取り替えた頑丈な鍵ではなかったのである。

不審に思い周囲を見回すと、近くによく似た自転車Aが駐輪してある。

新しい鍵は自転車Aに付いていた。

なるほど.GIFXさんは、ここで、

自転車を取り違えていたことにはじめて気づいたのである。

すぐに、取り違えで他人の自転車Aに乗っていたことを、

自ら駅前交番に届け出た。

また、駐輪場に自転車Bの未払い駐輪料金5700円を支払った。

3 Xさんには、他人の自転車Aを盗む意思(故意)はなく、

自分の自転車Bと間違えて他人の自転車Aに乗っていただけで、

自転車Aの持ち主への民事責任は別にして、何らの犯罪も成立しない。

しかし、Xさんは、警察署に連れて行かれた。

自転車Aと自転車Bは、警察のトラックで警察署に運ばれた。

Xさんは、2時間以上にわたって警察官から取り調べを受けた。

Xさんは、前述の経過を正直に説明したが、

入れ替わり立ち替わり、複数の警察官から怒鳴りつけられるなどし、

その言い分を十分に聞いてもらえなかった。

警察官らは、Xさんにつき、自転車窃盗としての処理を強行した。

4 Xさんは、警察官から、書類を渡され、書類控えJ.bmp

「ここにサインすれば、家に帰っていい。」と言われた。

その書類の文面には、

「他の書類の読み聞かせを受け、間違いないことを認めた」

旨の文言があった。

Xさんは、「何にも読み聞かせてもらっていない」と指摘した。

警察官は、漸く別の書類を取り出し、机の上に置いた。

Xさんが、その机に置かれた書類の内容に目を落とすと、

「盗む」という意味の文字が書かれており、驚愕・混乱する。

Xさんは、ずっと、

「間違えたこと」、「自転車を取り違えたこと」を責められていると思っていたので、

「間違えても盗んだことになるのですか。」と警察官に尋ねた。

警察官は、「そうだ」と返答した。

Xさんが、「それでは、間違えたということを書類に記入して下さい。」と申し出た。

警察官からは「書類を簡単にしてあるので、入れられない。」といって断られた。

Xさんは、それ以上は尋ねる気力が出ず、言われるがまま書類にサインした。

その後、別室で両手10指全部の指紋を採取され、

上半身の写真撮影をされるなど、犯罪者扱いをされた。

やっと、自分の自転車に乗って帰るように言われて帰宅したが、

家に着いたら午後10時頃になっていた。

5 Xさんは、2時間余に亘る警察での強引な取調べで、

「盗んだ」という書類にサインし、犯罪者扱いされたことに

納得できなかった。

悩んだ末に、

弁護士に相談、弓仲が刑事事件として受任した。

弓仲は、警察署に赴き、

当該事件の進行状況、指紋採取及び写真撮影の根拠、

「間違えても盗んだことになる」ことを前提に犯罪捜査をしているのか等を質問し、

本件は犯罪とはならない旨の「質問・意見書」を提出、

地域課長と面談し、善処方を求めた。

地域課長の話によれば、

担当警察官は、よく見れば2台の自転車に後部の荷籠のラベルの色など、

小さいとはいえ、いくつかの違いがあるから、Xさんも違いに気づいたはずだとして、

窃盗事件として捜査したこと、

※注:微罪処分とは・・・

犯罪の証明があっても、刑事裁判に付する必要のない非常に軽微な事案については検察官に送致することなく、警察限りの訓戒等により終了する制度のこと。 

 既に、微罪処分(※注参照)として、

 処理済みとのことであった。

 しかし、Xさんには窃盗の故意はなく、

 この微罪処分には納得できないとして、

再捜査を強く求めた。

その結果、

2台の自転車の類似性と違いについて、再見分するとともに、

Xさんが自転車を取り違えた現場の駅前大規模駐輪場を、

日没時刻に照らして取り違えた時刻とほぼ同じ明るさの時刻に実況見分することとなった。

弓仲が、Xさんとともに立ち会った駐輪場の見分では、

冬のことでもあり、相当薄暗くなっていたこと、

Xさんの視力が余りよくなかったことが判明した。

                      結局、再捜査の結果、警察署(地域課長)も、

現場の暗さ、Xさんの視力、最初の取り違えの際に、

Xさん持参の自転車Bの鍵で自転車Aが結果的に解錠できていたこと、

自転車Bにつき5700円の駐輪代金を納めたこと、

自転車Aを見つけてすぐに取り違えの届け出を交番にしていることなど、

Xさんに有利な諸事情を認め、

 Xさんに盗むという犯意(故意)はなかった、犯罪は成立しないと判断した。

6 警察署(地域課長)は、警視庁・警察庁本庁とも連絡をとって、データー画面PC.GIF

Xさんを犯罪者として作成した全ての警察にある書類、指紋、

写真の破棄・削除・抹消(コンピューター上の電磁記録も含む)

の手続を始めることを約した。

また、検察庁にも連絡し、

微罪処分としてひと月ごとに検察庁検事正宛に概要を

一括して提出済みの報告から、

Xさんに関連する報告を抹消する手続をすることも約した。

それから3ヶ月近くたったある日、

警察署(地域課長)から、弓仲宛に電話があり、

「お約束の抹消・解除の手続は全て終了し、私(地域課長)が確認しました。」

と原状回復の報告を受けるに至った。

「警察に楯突くとどんな嫌がらせがあるか分からない。」と、

当初は本件依頼を迷いに迷っていたXさんだったが、

最後は、理不尽な警察の取り調べや処置に泣き寝入りせず、

闘ってよかったと笑顔で納得のXさんであった。