先日、仕事で岩手の一ノ関に行く機会があった。
白鳥の飛来地として有名な宮城の伊豆沼が
近くにあることを知った。
以前、鹿児島の出水で、
一万数千羽の鶴達が、一斉に飛び立ち、
昇り出ずる朝日を背景に大空を群舞する壮大な光景を目にした時の感動が蘇った。
『エイヤ!』と朝4時半に起きて、伊豆沼に行った。
ところが、残念なことに、白鳥は10数羽しかいなかった。
遠くシベリヤからやって来る白鳥が、今年は、暖かいため、
まだ青森あたりで止まっているらしい。
でも、そのシベリヤから、白鳥より一足先に、カモが、そしてガンが、大勢到着していた。
彼らは、一体何をきっかけにするのだろう、
ボスが「サア、出かけるぞ。」と一声上げるのだろうか、
太陽が顔を出す前後、本当に突然、一斉に、飛び立つのである。
何千羽、何万羽という鳥達が、大空に群舞し、
そして、グル−プごとに、それぞれ方向を定めて、
あるものは隊列を組んで、一糸乱れず飛んで行く。
その様は、一瞬ヒッチコックの『鳥』の光景を思い出させたが、
それとは違い、大らかであり、
また彼らがあんな小さな翼で、シベリヤからの長い旅を経て来たことを思うと健気でもある。
都会の喧騒を離れ、忙しい毎日を忘れ、
身体ごと大自然に溶け込んだきらめくようなひとときであった。
この伊豆沼は、
湿地帯を保護するラムサ−ル条約で、
日本で最初に保護地域として指定されたおかげで、
この自然が守られてきたらしい。
・・・切ないことである。