昨年秋、私は、ほんの一時期、小学校お受験ママと化した。
動機は、日々仕事に追われる身では、
か弱い我が坊やがイジメのターゲットになっても、
学級崩壊の嵐に巻き込まれても、気が付かないのでは、
と昨今の小学校の荒廃報道に怖じ気づいた(血迷った)事にある。
とはいえ、幼い子供を塾に通わせ特訓する気持ちはサラサラない(・・・甘すぎた)。
受験校は早期受験教育の弊害を説き、
数年前にあえてペーパーテストを廃止した某私立小学校1校のみ。
「受験産業で訓練された指示待ち子供ではなく、
自分の頭で考える独創的な子供を」
との学校の方針が気に入った(・・・真に受けた)。
うちの子もいけるぞ。
が、競争率は、10数倍−うちの子はいける...かナ。
面接待ちをする数十組の両親たちの服装は、ほぼ真っ黒である。
これは、まるでお葬式である。
赤いスーツ姿の私の目立つこと!
(・・・できるものなら脱ぎたかった)
次に、子供の実技試験で驚いた。
数十人の子供たちは、紺の半ズボン、紺のチョッキ、紺のブレザーである。
赤・黄・緑のカラフル信号坊やの我が子の目立つこと!
(・・・できるものなら脱がせたかった)
お受験要項のどこにも、服装についての注意はなかったぞ。
一体どこでそんな服装にしろと言われたのだ!
(・・・入道雲のごとく湧き上がる不安)。
20分の待ち時間だって無駄にはしないぞと、
あちこちで、折り紙・お絵かきetc。
直前特訓に熱こもるお受験ママとお受験子供たち。
そんな鬼気迫る雰囲気など、どこ吹く風と、
我が脳天気坊やは、初めて見る学校の教室、校庭の観察に余念がない
(・・・今更どうしようもない)。
「では、試験会場に移動します!
受験カードを右手、体操服を左手に持って、整列して下さい!」
との試験係の声に、
子供たちは、サッと右手に受験カード、左手に体操服を持ち、一斉に立ち上がる。
一言も無駄口をたたかず、ビシッと整列する。
これは、まるで、軍隊である。
「受験産業で訓練された指示待ち子供」軍団である
(・・・学校の方針がほんまものなら全員不合格のはずである!)。
とはいえ、
「お母さん、右手ってこっち?」モタモタする我が子に、
『右・左くらい教えておけば良かった。』・・・母は、心でつぶやいた。
その夜、お受験経験豊富な姉にこの話をしたところ、
「そりゃあ、落ちたわ!」とカラカラと高笑い。
私はこの高笑いで我が子の不合格を確信した。
結果、右も左もわからない信号坊やは、見事不合格。
フン!アンナ学校、アンナ親達、アンナ子供達の中に、
可愛い我が子を放り込まないですんだというモンダ。
(・・・ うそつき、ウソツキ、嘘つき!
真に受けたワタシも馬鹿だったかも知れないけれど、
学校ができない話しをして親を騙して、ひどいじゃないの。
諭吉先生が草場の蔭で泣いてるぞ!)