★★ 変額保険訴訟報告 ★★
1 一銭も支払わずにすむ理想の相続税対策プランが開発されました!
あなたの土地にいくらの相続税がかかるかご存知ですか?
近い将来何千万円、何億円もの相続税がかかりますよ。
払えますか?払えないでしょう?
そしたらあなたの大事な土地は、人手に渡ってしまいますよ。
それでは奥さんお子さん達が可哀想でしょう?
この保険に入れば、相続税の心配は一挙に解消できます。
保険料も、利息も何もかも、
銀行が、この変額保険に限っていくらでもご融資致します。
あなたは、一円のお金も出さなくていいのです。
あなたは、あなたの土地を担保に提供するだけでいいのです。ここがミソです。
土地を担保に銀行から借入れをすることが、『相続税対策』になるのです。
借金がかさんで大変とのご心配は無用です。
借金が増えれば増えるほど相続税対策の効果が大きくなるのです。
保険会社は、保険料を、実際は二桁で運用しているのですが、
最低でも九パ−セントで運用しますから、
銀行金利より常に上回っています。
有名保険会社が運用し、大手銀行がここまでバックアップ
しているのですから間違いないです。
保証します、ご安心ください。
・・・さて皆さんは、こう話しを持ちかけられたら、どうでしょう?
こう勧めている相手は、 うさん臭いセ−ルスマンではなく、
おかたいことで信用のある大手保険会社に大手銀行です。
2 時は平成元年から平成2年にかけてのバブルの時代です。
土地価はうなぎ上りに上昇し、これに負けじとばかりに路線価も上昇していた時でした。
バブルで浮かれた世相の裏側で、たまたまこの大都市圏に土地を持った庶民は、
ただこの土地に子供の代まで住ませ続けたいという切ない願いのために、
来たるべき相続税の対策に心を痛めていたのです。
相続税対策の名の下にこの保険に加入したのは、
老後のこと、そして、
自分にもしものことがあった時のことを深刻に考え始める年齢
の方達でした。
3 バブルの崩壊は、この保険の『リスク』を現実化した。
加入後、暫くして保険会社からのお知らせで、マイナス運用の事実を知りました。
そして、この保険のこと、相続税対策のことを調べ始めました。
調べても調べても良く理解できません。
でも、わかったことが一つありました。
このまま行くと、膨れあがり続ける借金のために
大切な土地を手放す事態が来るかも知れないということです。
そうならないように今のうちに解約して膨れあがった債務を返済しても、
まさに、行くも帰るも借金地獄。
土地を手放したくなくて入った保険なのに・・・!
どうしてこの大きな借金が返せるだろうか。
こんなこと一言だって保険会社も銀行も説明してくれなかった。
説明してくれたら、絶対にこんな保険なんか入らなかったのに。
・・・夜も眠れない日々が、続きました。
夜中に一人起きてブツブツ独り言をつぶやいたり、
早く死ねばこの借金地獄から救われるかもしれない
と自殺を考えた人も少なくなかったのです。
自分一人が愚かであったのかと、自責の念にさいなまされる毎日であったといいます。
4 この保険の名は「変額保険」。
請求金額合計金18億4,300万円、保険金額合計金32億円
−この4月から7月にかけてわが事務所が提訴した
『変額保険』をめぐる訴訟8件の総計です。
変額保険は、昭和61年10月、我が国に初登場しました。
本来は投資用の金融商品でした。
他方、

保険といえば、我が国ではそれまでは100%定額保険であり、
今でも保険の大部分はこの定額保険です。
定額保険とは何か?
・・・簡単です、皆さんが思っている、
もしもの時の「リスク」に備えて安心のために入る保険のことです。
保険会社は、皆さんが払った保険料を運用しますが、
その運用のリスクは保険会社が負担し、
皆さんに約束された保険金や解約金は、確実に保証されます。
「当たり前じゃないか、だから保険に入るんだ。」 そんな声が聞こえてきそうです。
ところが、
変額保険は、皆さんの保険に対するイメ−ジと180度異なる保険です。
簡単に言えば、元本割れを起こします。
死亡保険金の最低額は、保証されますが、
満期保険金や解約金は、上にも下にも動きます。
払った保険料をいくらでも下回り得るのです。
保険会社は、保険料を運用しますが、
その運用のリスクは、皆さんが負担することになっているからです。
保険会社は、保険料を株式や公社債等に投資して運用するのです。
ハイリスク・ハイリタ−ンの極めて投機的な保険です。
保険会社は、運用の腕が悪くったって、景気が落ち込んだって、
どう転んだって、ツケは皆さんに回せるのです。
まさに、保険会社にとって、安心できる保険なのです。
そして、
保険会社がどう運用するかについて、皆さんは一切口出しできません。
いわば白紙委任です。
もしもの時の「リスク」に備えて入った保険は、
実に別の「リスク」をその本質として抱える保険だったのです。
そしてその「リスク」たるや、一般市民にとって想像の域を越えた、
そしておよそ自力では回避し得ない「リスク」なのです。
5 手に手を取り合って
さて、この保険は、初めは一人で歩いていましたが、なかなか売れなくなりました。
すると面白いように売れ始めました。
しかも、これまでのような小口ではありません。億単位の大口保険契約です。
キャッチフレ−ズも、「財テク」の看板を隠し、
「一円の自己資金も不要な相続税対策」に変えました。
保険会社は、
手詰まり状態にある変額保険市場を何とか打開する方策はないか
アレヤコレヤと策を練っていました。
金余りの銀行は、
お金を貸したくって仕方がありません。勿論、この保険のことは知り尽くしております。
しかし、「リスク」は、お客がかぶればいいのであり、銀行は土地をいただけばよい。
ここに変額保険独自の元本割れの「リスク」は、
膨れあがる銀行への借金と相まって、
最後には銀行に土地を取られて、なお巨額の借金が残るという
途方もない「リスク」に転化したのです。
銀行はお金をどっさり貸せるし、
保険会社は保険料をどっさりいただける。
ここに両者の要求は合致し、しっかり握手をしました。