★★★早期の脳神経科専門医の診察やCT検査で救命できた!!
〜浦和地方裁判所の鑑定〜★★★

1 A氏ご夫妻の長男N君(12歳)は、潰瘍性大腸炎の治療のため、
1987年1月13日、地域のD大学病院に入院した。
絶食治療の過程で栄養補給のため中心静脈栄養法実施。
1月22日の午後、研修医がN君の右鎖骨下静脈へのカテーテル刺入
を数回試みたが、うまく入らず、抜去。
その直後より、
N君に頭痛、嘔吐、意識傾眠(午後3時30分)の症状が出現。
以後、つき添いの父母の素人目にも、
明らかにN君の意識のレベルは低下し、嘔吐も続く。
時々現れる医師は様子を見るだけで何の措置もしない。
意識が薄らいでいくN君の傍らで父母の不安は募る。
翌23日午前11時、
「意識レベル悪化」と判断した主治医がようやくCT検査を指示したが、
検査結果は、「小脳梗塞」を示す所見。
緊急手術となる。
しかし、N君の症状は改善することなく、2月6日に死亡するに至った。
2 カテーテル刺入前には、特に異常のなかったN君が、
一夜にして意識がなくなり、手術するも死亡するに至ったことで、
A氏夫妻は、D病院と主治医の治療への不信が募り、
証拠保全の後、
1990年1月、浦和地方裁判所に損害賠償請求の訴訟を提起した。
3 4年に及ぶ訴訟は、
関係医師や原告本人(A氏)の尋問による立証を経て、
裁判所の選定した小児科医および脳神経外科医の鑑定の結果を待つこととなった。
立証の結果は以下のとおり。
① カテーテル刺入後の手技ミス(過って動脈を刺した)の疑いは残るものの、
十分立証できず。
② 小児の小脳梗塞自体が稀な病気で、早期診断できずとも、
病院側の「過失」とするのは困難。
③ 「頭痛、嘔吐、意識レベル低下の症状を受けて、
『小脳梗塞を含め、クモ膜下出血、脳出血等の頭蓋内中枢神経疾患』を疑い、
早期に脳神経の専門医の診察やCT検査をしておれば、救命できたはず」
との原告側の被告側医師への追及が一定程度功を奏した。

④ 鑑定結果は、
小児科鑑定医の意見が、
「早ければ22日午後3時30分、
遅くとも23日午前2時30分迄には
脳神経系の病変を疑うことは可能」と出た上で、
脳神経外科鑑定医の意見も、
「23日の早朝以前に、
脳神経の専門医の診断を仰いだり、CT検査を施行しておれば、
早期に手術等を行うことにより、
急死の最悪事態を避けることが『70パーセント』の確立で可能」
と出たのである。
4 鑑定を受けて被告有責前提の和解が可能となり、
和解金3,500万円の支払を受け解決した(1994年1月28日和解成立)。