子どもが小学校に入ると、
働く母親にとって、少しだけ肩の荷がおりる。
が、新たな難問を突きつけられる。
その名も「PTA」。
言葉は悪いが、いまなお専業主婦の牙城である。
ご存知だろうか、或いは思い出していただけるだろうか?
学年はじめの保護者会は実に緊迫した陰鬱な空気が張り詰めている。
「PTAの役員決め」という、PTA最大のイベントが、
ものの十数分にすぎないが、張り詰めた沈黙の水面下で、
激しい攻防戦をもって繰り広げられるのである。
女性の社会進出に加えて、不況の昨今、働く母親の占める割合は、
クラスの過半数に及ぶことも珍しくない。
しかし、PTAは、かつての「母親は家庭に」「こどもの教育は母親が」の発想のまま、
全てのPTA活動を平日の昼間に設定している。
他方、共働き家庭内においても、
まだまだ「こどもの教育は母親が」の思想だけは生きている。
だから、働く母親は、職場で何度もあっちにもこっちにも頭を下げて、
子供の病気や保護者面談等月1ペースの学校の諸行事で休む。
有休の持ち札は、一枚一枚熟慮して使わなければならない。
使い方を誤れば、いつ何時「あんたは明日からもう会社に来なくていいよ。」
と首に匕首突き付けられるか分かりません。
そこを、「平日の夜や休日は、主人が家にいるので外出できません。
PTA活動は、平日昼間に限ります。」との揺るぎ無い大前提のもと、
「仕事は役員を断る理由になりません。」と、
仕事を持たない母親が、仕事を持つ母親に、役員になれと迫るのである。
むごい・・・。
が、この戦いは、所詮コップの中の嵐である。
少子化現象、子どもの犯罪の低年齢化・凶悪化、
子どもをターゲットにした凶悪犯罪の頻発、
教育予算の削減による教育環境の劣悪化等々、
現代社会における子どもの教育学校問題は、
母も父も一緒に取り組まなければ解決できないほどに、
複雑化している。
様々な職種の人間が、知恵を出し合い、
意見を出し合わなければ、
問題の本質は見えてこないし、真の解決策もうまれない。
PTAは、その重要なパイプなのである。
専業主婦対仕事を持つ母との図式では事は解決しない。
昨年見学する機会のあったカナダの公立小学校では、
父母の様々な活動は勿論、学校の主催する保護者会や学校説明会も、
夜間或いは休日に持っているとのこと。
働く父母の参加を保障するためには当然のことだと説明された。
「逃げの一手が一番」という誘惑を振り払い、
この暑い夏、同士を募って、PTA構造改革の企みを練っている。
「先は長い、エンドレスかもしれないなぁ。ヤレヤレ。」
と心でつぶやきながら。