正月というとめでたいものとして、よく鶴が登場するが、
掛け軸にしろ、置物にしろ、決まって、
頭頂部の赤い丹頂鶴(標準和名はタンチョウ)である。
冬の釧路原野にタンチョウを訪ねるのもいいが、
どうも寒いのは苦手という人には、鹿児島県出水市の荒崎がお勧めだ。
毎冬およそ一万羽の鶴の群れが、
はるばる中国の東北地方やシベリアから、この荒崎を目指し渡ってきて、
この地でひと冬を過ごす。
全世界に生存するほぼ全てにあたる八千羽前後のナベヅル(全体的に黒っぽい濃灰色)と、
約半数にあたる二千羽近くのマナヅル(羽色全体が明るい灰色で、深紅の目の回りが鮮やか)が、
日の出の頃に塒から飛び立ち乱舞する様や、
日の入りの頃塒入りする際の真っ赤な太陽を背景とする荘厳な眺めは
えも言われぬものである。
人の手と文明により、
自然が破壊され、鳥たちの棲息地が次々と奪われていく中で、
明日の人類の運命をも見据えて、
世界的にも貴重なこの鳥たちの安息の場を
大切に保護していきたいものだ。