2 ある会社員の男性、被害者女性に痴漢と間違われ、
駅の事務所に一緒についていったら、そのまま警察に連行。
九州から会社の出張で東京本社の研修に参加するために
駅の事務所に一緒についていったら、そのまま警察に連行。
九州から会社の出張で東京本社の研修に参加するために
乗車した満員電車で、痴漢に間違われての逮捕である。
3 警察官は、「認めないと釈放されないぞ」
などと机を叩きながら自白を強要。
勤務先のこと、家庭のこと、あれこれと押し寄せる心配や不安に負けて
一旦自白してしまったが、

弁護士と面会で気持ちを立て直し、
その後は、「両手で前に鞄を持っていた手の甲が前の人の
臀部にあたったことがあるが、わざと触ったことはない」
との否認の主張を打ち出した。
4 裁判でも一貫して無実を訴えた。
本件では、逮捕直後は否認していてものの、
警察官の「認めれば釈放されるとの言動」や「畏怖を感じるような言動」により、

嘘の自白や不利益な供述をしてしまった
−平和な日常にいる市民から見ると、
「どうして、事実でないことを認めるのか?
認めるからには、実はやっているんだろう?」
と思いたくなることだろう。
だが、その平和な日常からいきなりこのような事態に放り込まれた時、
人は理不尽さと自分の無力さを同時に思い知り、
理不尽さに徹底抗戦するよりはまずは脱出しようと試みるのである。
しかし、粘り強い証拠の吟味や事実の調査の中から真実は浮かび上がる。
① 警察署に連行直後に作成された弁解録取書記載の弁解録取の時刻
(午後10時33分)にその手続きをすることは、
駅の「記録簿」記載の警察官到着時刻(午後10時25分)
や被告人らが駅事務所を出た時刻(午後10時40分)からして不可能であること、
② 被告人の同房者が、被告人から、

「自分はやっていない」
「警察官から机をたたくなどの威嚇的取り調べをされている」
「全部言ったら明日出られると言われた」などという話を聞き、
自分の日記にその旨の記載をしていた上、
裁判でも証人として同旨の証言をしてくれたこと等
が決め手となり、
東京地裁(合田悦三裁判官)は、
被害者の犯人識別証言、警察官の証言や捜査段階での被告人の自白調書
につき信用性を否定し、
「被告人の犯行とするには合理的な疑いがある」として、
昨年5月28日に無罪(求刑懲役2年)を言い渡した。
5 否認事件のため、
裁判中の被害者の法廷での証人尋問終了までは保釈されず
87日間の留置生活を余儀なくされた。
逮捕以来1年3ヶ月余の無罪判決であったが、
検察官の不当な控訴により今も東京高裁に係属中である。
冤罪被害者の負担は重い。