戦前の弁護士会は司法大臣の監督下におかれ、
弁護活動を理由としての弁護士資格の剥奪もあり得たのである
(治安維持法事件の弁護活動を理由に処分された布施辰治弁護士の例を見よ。)。

戦後、新憲法下で、弁護士会は行政庁の監督・統制から解放され、
人権擁護と社会正義の実現を使命として、完全な自治権を獲得した。
公害、薬害等の国の責任追及や冤罪事件など、
弁護士は国家権力と対峙して様々な成果を上げてきた。
最近の名張毒ぶどう事件の再審開始決定や確定した
死刑再審無罪事件(免田・松山事件等)は、
代用監獄での自白強要や見込捜査による人権侵害の大なることを教える。
誤判回避の為に、捜査段階での弁護活動の意義は大きい。

しかし、今般の「司法改革」で制度化された被疑者国選弁護制度は、
起訴後の国選弁護も含めて、
法務大臣の統轄下にある「司法支援センター(法テラス)」
と契約し監督に服すことを弁護士に要求する。
法務大臣認可の規則とその監督下では、
権力と対決しての真の弁護活動は困難となる。
私にとって、法務大臣傘下に入れという「踏み絵」は良心にかけて踏めぬ。
今の制度の下では、
私が国選弁護を担当するのは残念ながら不可能となった。
現状を打開し、権力から独立した弁護活動確立に力を尽くしたいと切に思う。