リニア新幹線は必要か?〜(2022年1月1日)弓仲

今、リニア新幹線は必要か?

南海トラフ巨大地震に耐えられるか!

 

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はじめに

JR東海が約7兆円を投じて建設中のリニア中央新幹線(以下、「リニア新幹線」という。)は、

2015年12月から沿線各地で本格的な工事が始まった。

しかし、品川・名古屋間2027年、東京・大阪間の2037年の各完成予定が、この間に生じた様々な要因での工事の遅延などで数年間は遅れる見通しとか。

この機会に問題点を洗い直し、前のめりで進んできたリニア新幹線事業について中止を含めた大胆な見直しが求められよう。

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1  リニア新幹線の建設目的

JR東海の掲げる建設目的は概ね次の@〜Dのとおり。

@ 1964年開業の東海道新幹線が建設後60年地近く経過した、経年劣化対策、根本的な修理等が必要とされること。

A 大規模災害に対する抜本的備え、例えば、発生確率の高い東海・東南海地震の被害で、東海道新幹線が走行不能になる場合(将来リスク)に備え、東京、名古屋、大阪の三大都市圏間の大動脈の輸送を東海道新幹線のみならず、二重系列化すること。

B 東京から40分の名古屋、67分の大阪と通勤圏になり、人口7000万人の巨大都市誕生で世界に対応し得る機能的都市が実現すること。

C 三大都市圏以外の沿線地域の地域振興、経済発展、活性化に寄与すること。

D 超伝導リニア方式なる先進的鉄道技術の開発・確立で世界をリードするとともに他産業への波及効果も見込めること。

 

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2  昨年の報道に見るリニア新幹線工事の問題点 

昨年のニュースとなった問題点は、@ 静岡県の大井川流量減少問題とA 外環道の陥没事故で明らかになった大深度地下のトンネル工事の安全問題(地盤陥没の危険性)である。

@ 大井川は流域住民約62万人の水道用水のほか農業用水や工業用水に使われており、慢性的な水不足で毎年のように取水制限がある。静岡県の川勝平太知事は、リニア新幹線の静岡工区の工事で、「大井川の流量が最大毎秒約2トン減る」こと(大井川減水被害)への対策をJR東海に求めていたが、JR東海は「減少分に相当する湧水を導水路トンネルで大井川に戻す」とはいうものの静岡県の求める「100%全量戻す」とはいわない。対立が解決しないために静岡工区の工事は未着工のままである。

A 東京都町田市では、一部区間を除き、住宅密集地の地下40メートル以上の大深度地下でリニア新幹線が通過することになっている。調布市の外環道トンネル工事ルート上の大深度地下掘削工事で地盤陥没事故が発生し、同工事の危険な実態が大きく報じられたが、JR東海は、「陥没が心配」との住民への説明もしないまま リニア本線のトンネルを掘り進めるための準備を進めている。

さらに、リニアのトンネル工事での崩落事故も、岐阜県中津川市(昨年10/27)、長野県豊丘村(同11/8)と相次いで発生し前者では死者まで出た。

かかる事故に対する納得できる説明もJR東海からないまま工事は続行されている。

 

3  リニア新幹線工事による環境破壊・生態系破壊

.南アルプス一帯は2014年に「南アルプスユネスコエコパーク」に登録され、人と自然の共生をめざす貴重な自然保護区となっている。

ところが、リニア新幹線工事は、南アルプスに約25kmの長大なトンネルを掘ろうというものである。南アルプス一帯には、中央構造線と糸魚川−静岡構造線という大断層帯が通っており、掘削には多大な困難が伴う。

大井川等の水資源への影響のみならず、トンネル掘削で大量発生する土砂(東京−名古屋間だけでも5680立方メートル・東京ドーム45杯分)の処分問題とそれが及ぼす動植物・生態系への悪影響も大いに懸念される。

日本野鳥の会によれば、リニア新幹線が通過するすべての県でオオタカ、山梨県、長野県でクマタカ、岐阜県でサシバなどの貴重な猛禽類の営巣が確認され、JR東海の追加調査でも、ミゾゴイ、サンショウクイ、ブッポウソウ、イヌワシ、オオタカ、ノスリなどの絶滅危惧種等も確認された。10数年に及ぶ広範囲の工事が環境にどれだけの影響を与えるか計り知れない。

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4  東海・東南海地震、南海トラフ巨大地震などによる危険

地震学・歴史地震学の専門家石橋克彦氏(「リニア新幹線と南海トラフ巨大地震」集英社新書2021.6/22発行)によれば、リニア新幹線の地震に対する安全性については、専門家による具体的な議論や検討は全く為されてはいない。

JR東海は、東海道新幹線が東海地震で被災した際の代替としてリニア新幹線が必要という(1「目的」のA参照)。しかし、何本もの第1級の活断層をトンネルで横切るリニア新幹線自体、東海地震を含む南海トラフ巨大地震が発生すれば、大被害を受けるのであって、代替なり得ないだろう。
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5  リニア新幹線ヘの幻想と絶望

JR東海の掲げる他の目的も、ポストコロナ社会を展望するときには幻想と化す。全世界が温暖化に対する脱CO2 を目指すこの気候変動の時代に、消費電力が現行新幹線の3.5〜4.5倍といわれるリニア新幹線は省エネルギーに逆行するものでありその必要性は乏しい。

また、東京、名古屋、大阪の三大都市圏をつなぐ人口7000万人の巨大都市誕生も、人口減少期の現在、必要性は皆無である。テレワーク、リモートワークの拡大する現在、40分で名古屋へ、60数分で大阪へ行かねばならない必要性も乏しい。

JR東海が約9兆円の工事費を自己負担するということで始まった民間事業が、安倍元首相と葛西JR東海名誉会長との不透明なお友達関係を背景に、2016年には、政府によるJR東海への3兆円の財政投融資が為され、リニア新幹線事業は不明朗にも国家事業になった。

国民の負担が更にふくらむ心配は大きい。


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6  リニア新幹線事業は白紙撤回、事業中止ヘ決断を

巨大地震による対応不能の被害の可能性、各種環境破壊、大井川に減水問題、コロナ禍での需要の低下、気候変動問題への危機対策に逆行する莫大な電力使用などに思いを致し、JR東海は、未だトンネル工事がほとんど進んでいない今こそ、リニア新幹線事業を見直し、白紙撤回、中止の決断をすべきである。

 多くの国民はリニアを必要とはしていない。

 

 

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