サクラ疑惑、「不起訴不当」〜(2021年8月17日)弓仲
サクラ疑惑、アベ前首相の「不起訴不当」。東京第一検察審査会が議決。
1 サクラ疑惑に新たな動き

アベ前首相の後援会が、
政府主催の「桜を見る会」の前日に主催した
夕食会-前夜祭。東京の高級ホテルで開催-で、
参加者の飲食費用の一部を補てんしていた問題
(サクラ疑惑。有権者の買収疑惑。)などで、
新たな動きがあった。
東京第一検察審査会が、
アベ氏の不起訴(嫌疑不十分)につき、
2021年7月15日付けで、
捜査が尽くされていないとして「不起訴不当」の議決をしていたことが、
7月30日に公表された。
この議決を受け、東京地方検察庁は、アベ氏について再捜査を義務づけられた。
2 検察官の不起訴処分(嫌疑不十分)
アベ氏に対する公職選挙法違反(後援団体関係寄附)につき、
検察官は、不起訴にした。
その理由は、
① 前夜祭における費用不足額を後援会側が補てんした事実について、
「寄附を受けた側に、寄附を受けた認識」があった証拠がない
② 被疑者アベの犯意につき、
秘書らと被疑者アベの供述から認められない
の2点であった。

3 検察審査会「不起訴不当」議決
これに対し、検察審査会は、「不起訴不当」を議決した。
すなわち、
① 「寄附の成否は、あくまで個々に判断されるべき」であり、
「一部の参加者の供述をもって、
参加者全体について寄附を受けた認識に関する判断
の目安をつけるのは不十分」
② 「被疑者アベの犯意について、
秘書らと被疑者アベの供述だけでなく、
メール等の客観的資料も入手した上で、
…犯意の有無を認定すべき」としたうえ、
③ 「寄付を受けた側の認識及び被疑者アベの犯意

のいずれについても、
十分な捜査を尽くした上で
これを肯定する十分な証拠がない
とは言いがたく、
不起訴の判断には納得がいかない」として、
「不起訴不当」の議決をした。
さらに、
④ 「まとめ」として、
「『桜を見る会』は税金を使用した
公的な行事であるにもかかわらず、
本来招待されるべき資格のない後援会
の人達が多数参加しているのは事実で
あって、今後は、候補者の選定に当たっては、
国民から疑念が持たれないように、
選定基準に則って厳格かつ透明性の高いものにしてもらいたい。」
「政治家はもとより総理大臣であった者が、
秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は
国民感情として納得できない。
国民の代表者である自覚を持ち、
清廉潔白な政治活動を行い、
疑義が生じた際には、
きちんと説明責任を果たすべきであると考える。」
などと付言を付した。
検察審査会は、
サクラ疑惑・行政の私物化に対する国民の怒りと疑問の声をきちんと受け止め
「不起訴不当」を議決し、「再捜査」を検察とアベ氏に突きつけた。
検察は、
検察審査会の今回の議決を国民の疑惑解明を求める声として真摯に受け止め、
アベ氏後援会事務所の家宅捜索を含めやるべき捜査を尽くすべきである。

4 許せないアベ氏の言動−説明責任を果たせ
サクラ疑惑が表面化し、再々追及されたアベ首相(当時)は、
首相としての国会答弁で、
「ホテルとの契約の当事者はあくまで個々の参加者だ。」
「事務所や後援会の支出は一切ない。」
「価格分以上のサービスが提供されたというわけではない。」
「差額は補てんしていない。」
「明細書も領収書もない。」
などと118回も事実に反する虚偽答弁を繰り返した。
嘘が明らかになった後も、アベ氏は説明責任を果たしていない。
今回の「不起訴不当」議決が明らかになった際も、
アベ氏はぶら下がり取材に、
「今後、検察当局の対応を静かに見守りたい。」と述べた。
まるでひとごとの発言。
捜査の行方とは関係なく、
元首相の首相在任中の疑惑であり、
政治家としての説明責任をきっちりと果たすべきである。
国会も証人喚問を決めてアベ氏に真実を語らせるべきであろう。

なお、
後援会の会計責任者の元公設第一秘書は、
政治資金規正法違反(後援会の収支報告書不記載)で略式起訴され、
罰金100万円の略式命令を受けた。
責任をとって公設第一秘書を辞任したと報じられたが、
その後も、アベ氏地元の山口で私設秘書としてアベ事務所に出入りしているという。
モリ・カケ・サクラと続くアベ氏の疑惑は、
すべて「権力私物化」の疑惑。
諦めることなく、忘れることなく、疑惑究明を求め続けたい。
税金を使用した公的な行事である「桜を見る会」(各界の功労者を招く)をアベ氏が私物化し、本来招待されるべき資格のない後援会員多数を招待し、国民の血税で有権者を「買収」していた疑惑。
さらに、「桜を見る会」前日の前夜祭では、高級ホテルに一人5000円の会費で後援会員を集め、会費で不足する支払額をアベ氏側が補てんした疑惑。
この補てんは公職選挙法が禁じる「有権者への違法な寄附」となる。

注2 検察審査会とは?
選挙権を有する国民の中からくじで選ばれた11人の検察審査員が,検察官が被疑者(犯罪の嫌疑を受けている者)を裁判にかけなかったこと(不起訴処分)のよしあしを審査する制度。検察官の起訴独占主義に対する例外の一つで、公訴権の行使に民意を反映させコントロールする制度。
起訴すべきだとの意見が8人以上で「起訴相当」の議決。→検察官が再捜査でも不起訴にした場合は、検察審査会は再度の不起訴処分の当否の審査を行う。→「起訴相当」意見が8人以上で「起訴議決」(強制起訴)ができる。
不起訴処分を不当と認めるときは過半数で「不起訴不当」の議決。→検察官の再捜査が義務づけられるが、再捜査の結果でも不起訴にした場合はそれでおしまい。