不当な「職務質問」にSOS! 現場に急行して対応 〜(2017年8月15日)弓仲
1 ある日の夕方、
警察の執拗な「職務質問」を受けている
という男性Aさんから、

事務所に弁護士の出動を求める緊急SOS!の電話が。
出先で連絡を受けて、車で現場に急行。
現場では、
Aさんの乗用車の前にパトカーが停まっており、
5、6名の制服警察官が
ガタイがよく丸刈り頭のAさんを取り囲み、
何やら押し問答をしている。
弁護士と名乗り名刺を出し、話に割って入った。

2 聞いてみると、
Aさんは車道の左端に車を止めて
車の中で弁当を食べていたところを
パトロール中の3名の警察官に
窓越しに声をかけられたという。
停車違反の場所でもない。
Aさんにとっては、
まるで理由の分からない「不審尋問」「職務質問」である。
納得はできなかったが、
自動車車検証と運転免許証を窓を開けて提示したところ、

次はダッシュボードを開けろという。
さらに納得できないままAさんは、
やむを得ずダッシュボードを開けて窓越しに見せた。
ここまでがAさんの我慢の限界である。
ところが、警察官たちは、さらに
助手席においていた横長で大きめのAさんの財布
を開けろというではないか。
現金の外に、キャッシュカード、ポイントカードその他のカード類、
複数の所属団体の名刺、交友関係の名刺など
Aさんのプライバシーに関わるもの
がいろいろ入っていたが、
犯罪に関係するような怪しいものは何も入ってはいない。
Aさんは、ことここに至り、
言いなりに自らのプライバシーを警察官
らの目に晒すことを拒否し、抵抗を始める。
プライバシーに関わることで、見せる理由はない。強制か?と問うと、
警察官らは強制ではない、任意でお願いしているとの答え。
しかしながら、Aさんを一向に帰そうとはしない。
3 Aさんは、自らの携帯で自ら近くのB警察署に電話を入れ、
何も悪いことをしていないのに

パトロールの警察官に取り囲まれ帰れないと通報。
署の上の人が来れば、
パトロールの警察官に話してくれ解放されるかと思っていた
のに、やってきた2人の警察官は、ちょっと話を聞いた上で、
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一緒になってAさんに財布を開けろ、見せろと迫ってきた。
見せろ、見せないの押し問答が続き、らちがあかないので、
Aさんはスマホで弁護士事務所を探し、
SOS!の電話をしてきたという次第。
4 Aさんによれば、もう2時間近くも帰してくれないと訴える
(警察官らは、1時間ちょっとと言い張っていたが)。
弓仲が、警察官らに対し、令状の有無を確認したところないという。
令状なしの任意捜査というなら、本人が断っているんだからすぐに解放する
ように求めたが、
署から来た警察官は、
ダッシュボードは見せていながら、財布を見せないのは怪しい、
何もないなら見せたら済むすむことだ、
警察としては見せてもらえるまで説得を続ける
という。
「任意」といいながら
長時間にわたり、本人の意に反して帰さない
のは「強制」そのもの、
無理にでも調べたいなら裁判官の「捜索令状」をとってこい

というも、説得を続けるとの態度を変えない。
警察官らの言い分は、
他人名義のカードがあればカード詐欺の疑いが出る、
違法薬物があるかもしれない、
住所は都内にあるのに、調べたところ、
この車の車庫証明は
東京から遥か離れたC県D市になっていて怪しい、
車庫飛ばし(道路交通法違反)が疑われる、
などと勝手な推測を並べ立てるだけ。
5 すでにAさんへの「不審尋問」「職務質問」が始まってから2時間以上、
弓仲が臨場してからでも30分が経過。
局面打開のために、弓仲が、警察官の了解を取り、
依頼者であるAさんとの打ち合わせをすることにした。
少し離れた場所に停めていた弓仲の車の助手席にAさんに乗ってもらい、
ロックした車内で、Aさんと話す。
弓仲とAさん(普段着のポロシャツ姿だった。)はこのときが初対面。
聞いてみるとAさんは、都内のお寺とC県D市のお寺の住職さんで、
都内の仏教系大学での研究者でもあるという。
現住所は都内にあるものの、始終C県D市のお寺とも車で行き来しており、
昔、車を買ったのがC県D市にいたときで、
そこで車庫証明をとっていたとのこと。
怪しまれるようなものは財布には絶対に入っていないというので、
その点を強く確認したところ、
弁護人である弓仲になら財布の中身を見せてもいいという。

一瞬ためらいもしたが、弓仲はAさんを信用し、
財布の中身を見せてもらうことにした。
中を詳細にチェックしたが、Aさんのいうとおり、
財布の中には怪しいものは一切入っていなかった。
結局、弓仲が警察官に対し、
弁護人である弓仲が
財布の中身を確認したが、
一切怪しいものが入っていなかったこと
を伝え、解放を強く求めたところ、
ようやく、警察官たちが引いた。
無事、Aさんは、車を運転して帰っていくことができた。
後日、事務所に現れたAさんは、僧侶としての袈裟姿で、
理不尽な「不審尋問」は許せなかった、
警察官たちの法律違反・憲法違反の振る舞いが許せなかった
との心境と解決への感謝を語ってくれた。
6 警察官職務執行法第2条1項には、
「警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。」
と規定されている。

つまり、何か犯罪を犯し、犯そうとしていることなどが、
本人の挙動や周囲の状況などから合理的に判断して、
その疑いが十分ある場合に限り「職務質問」ができるのであって、
警察官といえども自由勝手に人を呼び止め質問できる権利
があるわけではない。
ましてや所持品検査を強要することなど許されないのである。
しかし、警察では、警察官らに対し、
失敗をおそれず、やる気を出して数多く実施することで犯人を検挙できる
と、「職務質問」を事実上無差別にやることをけしかけている。
私たち市民の対応としては、
警察官から呼び止められても、ビクビクする必要はなく、
「ご苦労様です。何か事件ですか。私は全く関係ありません。失礼します。」
などときっぱり断り、その場から立ちさるのが原則。
かつて実際にあったこととして、
「さっき自転車泥棒がありました。すみませんがカバンの中をみせてください。」
と「職務質問」を受けた青年が、
「私のカバンの中にどうして自転車が入るのですか。」
と見事に反撃したエピソードが伝えられている。
そもそも、
カバンやハンドバッグなどの持ち物や服のポケットなど身体の部分を調べるには、
「捜索令状」「身体検査令状」など裁判官の発行する令状が必要。
プライバシーを侵害するなど警察の横暴な「職務質問」には、
毅然とした対応が何よりも肝心であることを、
Aさんは身をもって示してくれた。
「共謀罪」法が成立し、
市民団体・労働組合への監視が強まる恐れが大きい。
「共謀罪」の疑いを口実に、
監視対象の団体事務所に出入りする関係者への「職務質問」もあり得よう。
正々堂々と対応し、
理不尽な「職務質問」、違法な「所持品検査」には応じる必要はなく、
警察署や交番への「任意同行」は拒否できる。
心したいものである。
