カッコウ−托卵、悲しき仮親オナガの子育て〜(2016年8月15日)弓仲

10%S @.bmp 鳴き声やさえずりを模した旋律でおなじみの「かっこうワルツ」を聞くと、

さわやかな高原の朝に心地よく響く、

カッコー、カッコーという甲高い鳥の声を思い出す。

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 カッコウの成鳥

日光の戦場ヶ原、小田代原、那須の千本松牧場、

信州の美ヶ原高原などでの経験である。

頭部と体の上面は青灰色で、

白い腹部に細い黒色横縞が帯状に並ぶ細身の鳥、

カッコウが高木の梢や枯れ枝などに止まり、

尾羽を上げて翼を垂らし、

喉を膨らませながら鳴き続けるさまを

間近に見たときは感動的だった。

 


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 毛虫をくわえるツツドリ(雌の赤型)

このカッコウによく似たツツドリは、

夏の山地の林に渡来し、

低い声でポポ、ポポ、ポポと鳴く。

秋口に南に帰る途中には、

低地に立ち寄り、

桜の木につく毛虫を食べて栄養補給する。

千葉県野田市、東京都杉並区や練馬区

の公園などでも目にできる。

 

カッコウの仲間のホトトギスは、日本には初夏に渡来し、夏を告げる鳥と言われる。

キョッキョキョキョキョキョ(「東京特許許可局」「てっぺんかけたか」などと聞きなす。)

と鳴きながら頭上を飛んでいく様は見たことがあるが、近くで止まっている姿は見たことはない。

いつか見たい鳥の一つである。

 


10%S A.bmp 先日仕事帰りに、野鳥観察で知られる多磨霊園に立ち寄ったところ、

10数名のバードウォッチャーが望遠レンズや双眼鏡で

樹上を見上げているところに遭遇。

聞いてみるとカッコウの巣立ちだという。

カッコウの成鳥は見たことはあっても巣立ち雛ははじめて。

わくわくしながら樹上を探した。

 

葉っぱや小枝の隙間から見えた

暗茶褐色の体と白い胸腹部に並ぶ細い帯状の横斑模様は、

まさしくカッコウ類の幼鳥である。

孵化後何日もにわたりたっぷりの餌を与えられまるまる太った元気のいい子だ。

遠くないところから、

カッコー、カッコーと親鳥の声が繰り返し聞こえるところからすれば、

どうやらこの幼鳥はカッコウとみて間違いはなかろう。

見ているとくだんの幼鳥がバタバタ羽ばたきながら、見やすい枝に移動。

全身が拝めた。ラッキー。

 

そのうちに、グェーイ、グェーイとけたたましい鳴き声と共に現れたのは、

頭は黒、頬から喉の辺りが白、翼と長い尾羽は淡青色、小型のカラスの仲間オナガであった。

カッコウの幼鳥のそばに飛んできたオナガは嘴にムシをくわえている。

幼鳥は、羽をバタバタさせながら口を大きく開き、

オナガに近づく。

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 カッコウの雛に給餌する仮親オナガ


幼鳥の赤く大きく開かれた喉の奥に

オナガは嘴を突っ込んで給餌。

このカッコウの幼鳥を育て上げたのは、

この仮親オナガだったのである。

仮親オナガは、30分おきに飛んできては

カッコウの幼鳥に給餌していたのだが、

次第にすぐには餌を与えなくなった。

幼鳥をじらしながらより高い枝に誘導し、

独り立ちを促しているようだ。

 

翌朝早く出向いたが、

カッコウの幼鳥は前日の木を離れ、そばのより高い木に移動、

交錯する枝と繁った葉っぱの中にいて、もう簡単には全身を見ることはできない。

グェーイ、グェーイと仮親オナガも何回か給餌に来たが、回数は減っていた。

カッコウの幼鳥も近くの木に飛び移りながら、上へ上へ。

どこかへ飛び去る日も近い。

 


10%S B.bmp カッコウの仲間は、自分で巣を作ることなく、

密かに他の鳥の巣に卵を産み落とし、他の鳥に子育てをさせる。

托卵である。

 

日本に渡来するカッコウの仲間は、先の3種に

ジュウイチー、ジュウイチー、ジュク、ジュクとなくジュウイチを加え4種類。

そのいずれも夏に托卵するためにだけ渡来し、

自らは一切子育てをしないものの、子供が育ったのを見届けて南に帰るという。  

托卵する親は、托卵の相手である仮親が卵を産むと、

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 カッコウの雛に給餌する仮親オナガ

その巣から卵を1個くわえ出し、

自らの卵1個を仮親の巣に産み落とす。

親も親なら子も子、

産み込まれた卵は、必ず仮親の卵より先に孵化し、

仮親の卵を自らの背中の凹みにのせて

全部巣外に放逐する。

このように巣を独占した雛は、

宿主である仮親の愛?と世話を一身に集め、

餌を独占して大きく育てられる。

仮親は、自らよりも大きく育った他人の雛を自らの子どもとして最後まで育て上げるのである。

 


10%S C.bmp  カッコウの托卵先は、

江戸時代には、ホオジロが多かったという。

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         ホオジロ

しかし、進化の過程での遺伝と個体学習もあって、

ホオジロが高い卵識別能力を獲得したためか、

ホオジロへの托卵は激減しているらしい。

 

もともと高原の鳥であったカッコウは、

高原で繁殖するノビタキ、アオジ、ウグイス、モズなど

托卵していたのである。

 

30数年前ころから平地へと生活場所を拡大してきたカッコウは、

平地の鳥、オオヨシキリやオナガなどにも托卵対象を拡大したという。

 

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         アオジ        ウグイス            モ  ズ
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      オオヨシキリ

 

托卵する側、される側が、お互いの生存をかけて進化競争を繰り広げている結果らしい。  

平地の多磨霊園で目撃した仮親オナガによるカッコウの雛の子育ても

かかる進化競争の結果であり、オナガが卵識別能力を高めることで、

遠い将来には、オナガへの托卵は減るかもしれない。  

 

カッコウ類の托卵は、ずる賢いと見えなくもないが、

見方を変えれば、生物の進化がもたらした、特殊な子育ての成功例ともいえるであろう。 

生物の進化の不思議をみた思いで、たくましきカッコウに乾杯!

 

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