たんぽぽ法律事務所

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あなたの電話、警察に盗聴されるかも・・・〜(2016年1月1日)弓仲

盗聴拡大・司法取引導入を含む「刑事訴訟法等一括『改正』案」は

廃案にするしかない

はじめに 

 現行盗聴法(通信傍受法)の導入時には、憲法違反(通信の秘密やプライバシーを侵害)の法案として大きく反対運動が盛り上がった。そこで、盗聴対象を、薬物、銃器、組織的殺人などの組織犯罪4類型に限定し、通信事業者の常時立会を追加することなどで、ようやく修正可決にこぎつけた。 

 いま、参議院で継続審議になっている刑事訴訟法等一括「改正」法案では、盗聴対象(従前の組織犯罪4類型)を、窃盗、詐欺、恐喝、逮捕監禁、傷害等の一般刑法犯を含む極めて広範囲なものに拡大する。通信事業者の常時立会も廃止される。 

 警察にとって使い勝手の良い盗聴法(通信傍受法)にしようというのだ。  

 「改正」法案が成立すれば、誰でも盗聴の対象にされかねない。 

 

 例えば、以下の例のように、あなたの電話も警察に盗聴され、丸裸にされるかも……。                  

 【例1】 

 A山氏の高校生の次男(A君)は、クラスの人気者だ。最近、A山氏の町では、オートバイ窃盗が頻発していた。A山氏家族は、B川氏家族と親しく家族ぐるみの交際があった。

 A君の友人で、B川氏の長男B少年は、気の弱い性格で頼まれたらいやとは言えず、知人のC少年に誘われ、1回だけオートバイ窃盗の見張りをさせられた。怖くなったB少年は、以後は、C少年との交際を絶っていた。

しかし、警察は、オートバイ窃盗の現場近く不審な挙動のB少年を見た

との目撃証言を得てB少年に目をつけ、

B少年宅(B川氏宅)の固定電話とB少年の携帯電話の

「通信傍受」(盗聴のこと!)の傍受令状をとり、盗聴を開始した。


【例2】  

 妻と2人の子供と暮らすD森氏は、会社の労働組合の書記長である。会社の今年の業績は良好だが、来年以降の業績見通しが立たないとして、組合の賃上げ要求に応じない。団交前の執行委員会で組合は、

「断乎として要求実現を勝ち取ろう。勝ち取るまで交渉をやめない。」と意思統一し、分担を決め交渉に臨んだ。

 会社側は要求に応じず、交渉は長時間に及んだ。

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 会社役員が、団交の部屋に閉じ込められたと警察に相談した。

  警察は、逮捕監禁の容疑で、

労働組合事務所、D森氏の自宅の各固定電話と

D森氏の携帯電話の傍受令状をとり、盗聴を開始した。


【例3】  

 両親と弟と一緒に暮らすE田氏は、地域の仲間と原発再稼働反対の運動を進める環境保護団体の副代表をしている。地元の原発再稼働に積極的姿勢をとる町長や町役場との交渉の前日に、

保護団体の役員会が開かれた。役員会では、「町長に翻意させるまでは、交渉をやめない。絶対に帰らない。」と意思統一して、交渉に臨んだ。当日は、予想した以上の反対住民が集まり、交渉の場にもなだれ込むなどした。当日の交渉では、町長側は要求に応じず、交渉は長時間に及んだ。

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 その後、町長は環境団体の役員や多数の住民に、

部屋に閉じ込められたと警察に相談した。

 警察は、逮捕監禁の容疑で、

環境団体の事務所、E田氏の自宅の各固定電話と

E田氏の携帯電話の傍受令状をとり、盗聴を開始した。  

【例1】〜【例3】のいずれの場合も、警察は、対象電話での会話の盗聴やSNSやラインでの通信内容のチェックを懸命に続けたが、過去の犯行や将来の犯行予定などの情報を得ることはなかった。警察は、盗聴記録を刑事手続で使用することを断念した。


【「改正」法案の内容】

 「改正」法案では、盗聴対象犯罪が、従前より大きく広がり、一般刑法案をも含むなど、大幅に対象が拡大した。

 従前は盗聴できなかった窃盗罪【例1】や逮捕監禁罪【例2】【例3】も、盗聴が可能とされる。

 「改正」法案では、従来の通信事業者の立会が不要となる。警察は、通信事業者の事業所に行く必要もなくなり、通信事業者が、対象の通信(対象者の携帯及び自宅電話、関係団体事務所の固定電話)の全てを取得・保存し、そのデータを警察内の機材に送信させるだけである。あとは、じっくり、署内で盗聴できるのである。

 警察は、振り込め詐欺や外国人を含む窃盗団・強盗団による犯罪への対応には盗聴が必要と強弁する。しかし、これらの犯罪グループは、1回成功すればその時に使用した携帯電話や銀行口座は二度と使わない。盗聴によって、これら犯罪の捜査が進展するとは考えられない。

【盗聴される通信の内容】

   盗聴(「通信傍受」)した、以下の傍受対象の電話通信内容には、対象者のプライバシー等の個人情報が含まれることは当然である。

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   上述の3例で盗聴対象となったのは、

B少年の携帯電話と自宅電話、D森氏の携帯電話と自宅電話、

労働組合事務所の固定電話、E田氏の携帯電話と自宅電話、

環境団体事務所の固定電話である。

 しかし、上記対象電話を介して行われた対象者の通話・通信のみならず、対象電話を通じての対象者家族の通話、組合員や団体構成員の通話までもが盗聴される。また、対象電話の相手方となり得る、多くの市民、他団体の構成員や他の労働組合の組合員との通話・通信が、根こそぎ警察に盗み聞きされる。

 さらには、盗聴対象とはなっていないが、B川氏家族と親しく家族ぐるみの交際があったA山氏家族の全員が、B川氏家族に自宅や携帯から頻繁に電話や通信をするたびに、その会話や通信内容は全て警察に盗み聞きされるのである。

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 捜査対象の事件に関する通話(上記各例ではなかった)以外のプライベートな会話、例えば、

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   「今、帰る。今晩のおかずは?」「カレーだよ。」

   「好きだよ。」「愛してる。」

   「子供たちは元気か?」「通信簿はどうだった?」「兄ちゃんは5が二つ増えたよ。」

   「明日は飲みに行こう。」「ゲイバーがいいなぁ。」

   「どうも彼女との関係がうまくいっていないんだ……」「◇子さんは、☆君が好きらしい。」

   「元気なさそうだけど心臓病の調子がよくないの。」「いや、今は喘息の発作で苦しい。」

などの個人的な会話までもが、警察に丸わかり。

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   「再稼働禁止の仮処分が取り消された!」「酷いね。」

   「次の日曜には、戦争法反対で国会前に行こう。」

   「今度の選挙では○×党には絶対に投票しない。」「アベ内閣の暴走は止めなきゃね。」

などの思想・信条にかかわる個人情報もだだ漏れ状態になる。


【盗聴被害は甚大である。】 

 捜査当局が、盗聴した通信内容を刑事手続で使用しない場合、すなわち、上述の例の如く、犯罪事実と無関係な内容盗聴については、通信の当事者には通知されることはなく、盗聴された者は、永遠にその事実を知ることがないのである。盗聴被害は甚大である。

  共産党幹部緒方宅電話盗聴事件では、神奈川県警所属の公安警察官らによる違法な犯罪(組織的犯行)であることが、国家賠償請求裁判での東京高裁判決(1997年6月判決、確定)で断罪された。

 同判決は、「電話…傍受による盗聴は、その性質上、盗聴されている側においては、盗聴されていることが認識できず、…盗聴された通話の内容…、誰との、何時の、いかなる内容の通話が盗聴されたかを知ることもできない被害者…の精神的苦痛は甚大」であり、この点は、慰謝料額算定に際し、充分に斟酌すべきと断じた。

 しかし、その後も、警察は「過去も現在も違法な電話盗聴はしていない」と居直り、緒方氏家族への謝罪すらしていない。

 その他警察の不祥事が頻発するなかで、「こんな警察に盗聴拡大を許したら、国民の人権は蹂躙される」ことは明らか。警察にいつ盗聴されるか分からない世の中ほど気持ち悪いものはなかろう。

 みなさん、こんな気持ち悪い世の中にしたいですか?

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おわりに

 更に、「改正」法案には、盗聴拡大の外にも、他人を引っ張り込むことで新たな冤罪の温床となる「証言買収・密告奨励型司法取引」制度が盛り込まれた。「取調の録画・録音」についても、ごく限られた事件についてのみ、大きな例外つきで規定されてはいるが、「盗聴拡大」「証言買収・密告奨励型司法取引」等の毒まんじゅうと引き替えにできるような代物ではないのである。

 冤罪被害者など法案に反対する市民らと共に、来るべき参議院法務委員会での徹底審議を求め続け、廃案に追い込みたいものである。

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