債権仮差押でスピード解決〜(2014年8月15日)弓仲
1 Aさんは、町のタイル屋さんです。
タイル工事や石工事の請負をして生計を立てていました。
2013年7月に、元請けの建設会社B社から、
海岸駅舎のタイル貼工事の一部を引き受けました。
約束の11月末までに工事を完成させ、
B社に引き渡しました。
2 しかし、B社は、約束の支払期日12月末になっても、
工事代金336万円を一銭も支払いませんでした。
Aさんは、B社社長と交渉の末、
翌月2014年1月末までに支払う

ー社長直筆の念書を受け取りました。
しかし、1月末になっても支払われません。
B社社長は、
他の工事の支払いを受けまであと少し待ってほしい、
今度支払いを受ければ真っ先に支払うなど
あれこれその場逃れをし、
しまいには、Aさんからの電話にも居留守を使うなど、
誠意のない態度をとり続けました。
3 その段階で相談を受けました。
訴訟を起こして勝訴しても、その段階で差し押さえる財産がなければ、
せっかくの勝訴判決も紙くず同然となります。
よくよく調べてみると、
B社は、Aさんへの支払いは滞らせているものの、
他の工事現場の仕事も幾つか請け負っており、
他から工事代金入金の可能性がありました。
そこで、本裁判の前に、「保全処分」として、
B社のC銀行口座の預金債権を仮差押することにしました。
仮差押は、通常、申し立てた債権者の言い分と資料だけで、
仮差押の結論を出します。
嘘の申立だとしたら、
差し押さえを受けた債務者に不測の損害を与えかねません。
そこで、この不測の損害の担保として、債権者は、
裁判所から一定の保証金を納めることを求められます。
保証金の金額は、
債権者の言い分を裏付ける資料の信用程度に応じます。
Aさんの場合は、請負契約書がありませんでした
(建築下請けでは、契約書を作らないことがままあります。)が、
契約書に代わる、注文書、請求書控え、売掛帳などの証拠を集め、
Aさんの陳述書を加えて申し立て、
2014年2月債権仮差押決定を得ました。
保証金は、請求額336万円の約2割の70万円でした。
4 仮差押決定を送達されたC銀行から、
B社口座に285万円の預金残高あり
との陳述書が提出されました。
仮差押えは、この金額の限度で奏を功したわけです。
預金は動くものですから、事案によっては、
仮差押えはできたが、
預金残高ゼロという残念な「空振り」もあるのです。
しかし、B社は、裁判所に起訴命令を申し立て、
起訴命令が出されました。
起訴命令とは、さっさと裁判を提起せよ、でないと仮差押は取り消すぞ
ーという債務者の対抗手段です。
Aさんとしては、裁判提起の長丁場も覚悟しました。
5 当職がB社と交渉した結果、
① B社は未払工事代金の内285万円(仮差押時のC銀行預金全額)を支払う。