集団的自衛権行使容認の閣議決定間近と報じられていた6月29日(日)の午後、
新宿駅南口、
拡声器で約1時間にわたり、
「集団的自衛権の行使容認」など安倍晋三首相の政策
に反対する内容の演説をしたのち、
焼身自殺を図るという衝撃的な事件があった。
インターネット上では、目撃者の投稿やニュースなど、
マスコミの扱いは極めて小さかった。
その行動の背景に
「集団的自衛権の行使容認」などの安倍晋三首相の政策
に強く反対する意思があった可能性については、
追及する姿勢に乏しく、黙殺同様の扱いであった。
NHKに至っては、報道すらしなかった。
世界保健機関(WHO)のガイドラインを根拠に
これを正当化しようとするのは妥当ではない。
「集団的自衛権行使容認」の閣議決定を2日後に控えていた安倍内閣と
それに反対する世論が各種世論調査で過半数を上回り、
総理官邸や国会周辺に多くの国民が閣議決定反対と
抗議のために駆けつけていたあの日に起こったこの事件を、
自殺予防への配慮はしつつも、
実際に起きたこととしてをきちんと伝えなければ
報道の役目は果たせない。
アメリカのNYタイムズ、ワシントン・ポスト、AP通信、
イギリスのBBC、フィナンシャル・タイムズ、
ロシア国際放送、中国の新華社等の
海外メディアは、この事件を報道し、大きな注目を集めている。
また、ベトナム戦争当時、
アメリカのベトナム侵略反対の焼身自殺は、
我が国でも大きく報道されていた。
マスメディアの姿勢には、
長いものに巻かれろ的配慮がなかったと言えるのか。
少なくとも、閣議決定直前の
「集団的自衛権行使容認」反対の焼身自殺報道で、
反対の世論の声が強まるのを
安倍内閣が忌み嫌ったであろうことは明らかであり、
報じないことに道理はなかった。
翌30日、7月1日と連日、
官邸・国会周辺の抗議の声はたかまっていた。
しかし、安倍首相のお友達、
「政府が『右』といっているものを、『左』と言うわけにはいかない」
と就任会見で発言した籾井勝人会長の下、
NHKの「ニュースウオッチ9」等のニュース番組は、
自公両党の閣議決定ありきを前提とする協議経過の報道と解説に終始した。
NHKニュースは、
歴代自民党内閣のもとでも確立・遵守されてきた
「憲法9条の下では集団的自衛権の行使は認められない」
という当然の憲法解釈につき、
閣議決定という安易な手法で憲法9条の骨抜きと
立憲主義破壊に向け暴走する安倍内閣の欺瞞に迫ろうとする姿勢に欠け、
反対世論の動向にはほとんど触れることなく無関心を貫いた。
他方、民間放送の番組では、
閣議決定による憲法解釈の変更を立憲主義の破壊とし、
この閣議決定の狙いは「自衛隊が海外で戦争すること」
と指摘するなど危機感をあらわにするものもあった。
かろうじて、7月3日放映のNHK「クローズアップ現代」は、
菅義偉官房長官を招き、
「集団的自衛権の行使容認」について質疑応答を伝えた際に、
「憲法の解釈を簡単に変えていいのか」
と突っ込みを入れるなど奮闘した。
ところが、キャスターの鋭い質問と食い下がりに、
安倍官邸が「君たちは現場のコントロールもできないのか」と猛抗議、
籾井会長らNHK上層部は平謝り・「犯人」捜しまでしたとか
(週刊フライデー7/25号。官邸やNHKは否定するが、ネット上の話題にもなっており、安倍首相や籾井会長のこれまでの言動やに照らしてもさもありなんと思うところである。)。
国民の率直な疑問を官房長官にぶつけた
現場のキャスターの質問は、
本来なら公共放送として当然のことである。
その当然のことに激怒する官邸も官邸なら、
それにうろたえ右往左往するNHK幹部も、
「1 世界平和の理想の実現に寄与し、人類の幸福に貢献する」
「2 基本的人権を尊重し、民主主義静清の徹底を図る」と
自ら「国内番組基準」にうたう「公共放送NHK」にあるまじき存在
と言う外はない。
安倍内閣の幹部との会食・懇談等マスコミ懐柔策に抗して、
自公の「集団自衛権の限定的な行使容認なら平和を維持し得る」との論は、
国民を誤解させる誤魔化しの論として批判的に報じる一部民間放送を励ましつつ、
政府の広報機関に堕しているNHKの報道を鵜呑みにすることなく、
検証し批判の眼を育むことが我ら国民に求められているのである。
「集団的自衛権行使容認の閣議決定」
を支持するよりも、批判・反対する世論が、常に多数を占めている。
この最近の世論調査の結果にも励まされながら、
批判の声を広げたいものである。