たんぽぽ法律事務所

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祭祀承継の争い、裁判で決着へ〜(2014年1月1日)弓仲

はじめに

系譜(系図)、祭具(仏壇、仏具、神具)、墳墓(墓石、墓地)遺骨などは、

法律上「祭祀財産」と呼ばれ、

通常の相続の規定は適用がなく、「相続財産」には含まれない。

「祭祀財産」は当然に相続人が相続するわけではないのである。

民法の規定(第897条1項、2項)によれば、

① 亡くなった被相続人が祭祀主宰者を指定していた場合はその者が承継し、

② 被相続人が指定していなかった場合は慣習に従い、              

③ 慣習が明らかでないときは家庭裁判所が決めることとなる。          

内縁(事実婚)の関係にあった者は、通常の財産の相続権はないものの、     

被相続人が祭祀承継者を指定せず、慣習も明らかでない場合には、        

被相続人に長年連れ添った内縁の妻などに承継させることもあり得る。

この祭祀の承継をめぐり、内縁を主張する相手方と裁判で争い、

その権利を守った判決を得た。

新年早々ではあるが、

故人を偲ぶ気持ちを大切にする肉親にとって大事な問題なので、紹介したい。

 

1 東京近県に住む東山A子さん(当時74歳)からの相談が本件の始りであった。

仲のよかった弟西川B雄さん(当時71歳)が亡くなり49日が過ぎても、

内縁を主張する相手方南本母子(C代、D郎)が、B雄さんの遺骨等を返さないとのこと。

  

2 B雄さんは、生涯独身であった。

40数年前、勤務先の信頼する先輩(上司)の南本さんから

その病死の直前に、妻子の面倒をみることを託された。

B男さんは、南本家の敷地内に新築した家に住み始め、

  南本母子の生活費など様々な援助をしたが、 

そこに男女の関係(事実婚)の実態はなかった。

 

3 A子さんは、病弱であり、足腰も弱ってきており、

最近はB雄さん宅を訪れる回数は少なかったものの、

B雄さんとはよく電話を通じてお互いの近況などを交換していた。

また、B雄さんはしばしば姉であるA子さん宅を訪れて、A子さんの家族とも交流した。

A子さんの娘や息子の結婚式には、B雄さん単独で出席しており、C代は来ていない。

 

4 A子さんの夫E吉さんは、競馬の趣味が共通で、

ここ10年余りにわたり、毎週のようにB雄さん宅を訪れ、

B雄さんから頼まれた馬券を購入して届けた。

その際、自由に動けないA子さんの依頼で、

食料品や日用品等を届け身の回りの世話などをしていた。

A子さんの長男F介さんが同行することもあった。

そういう際にも、南本母子が顔を出すこともなく、

同じ敷地内の別棟建物に住んでいるとはいえ、

南本母子との事実婚、義理の父子関係などを示すような実態は全くなかった。

 

5  B雄さんの食事の世話や身の回りの世話なども南本母子は一切していない。

B雄さんは、元気な頃から、自らの食事・風呂など家事をすべて自分でしていた。

B雄さんはD郎から嫌がらせをされており、しばしば、家から出て行けと言われた。


6  2006年8月、B雄さんは腎臓の病で病院に入院した。

E吉さんら東山家の家族は足繁く見舞い、

介護サービスの手配をするなど、何かとB雄さんの世話をした。

南本母子は何もしていない。

 

7  介護サービス会社のヘルパーからは、

その後の何回かの入院などの連絡は、すべて東山家にきた。

B雄さんの入院の保証人などは南本母子ではなく、

常にA子さんの夫E吉さんがなった。

南本母子は病院への見舞いには一度も来ていない。

B雄さんは、2006年8月以降、ヘルパーに日常的な世話をして貰いながら生活した。

 

8  B雄さんが、2011年4月に病状急変で入院した際にも、

ヘルパーからは、東山家に入院の連絡が入った。

今回の入院の保証人も南本母子ではなく、A子さんの夫E吉さんがなった。

 

B雄さんの意識が薄れたため、

ヘルパーと貴重品などの引き継ぎをする矢先に、

D郎が、勝手にB雄さんの貴重品等を全て持ち去った

 

D郎は、B雄さんの死期が近づくや、

母C代とB雄さんの内縁関係を主張し出した。

B雄さんが亡くなって葬儀の段取りを決める際にも、

B雄さんの資産関係が不明のため、

A子さんの夫E吉さんらが、預金通帳等の開示を求めたが、

D郎は「内縁を認めるとの書面を書かなければ、見せられない」

などと言って拒否した。

 

葬儀は東山家で行うつもりであったが、

南本家の方でも行いたいというので、やむなく合同で行った。

 

9 生前、B雄さんは、姉であるA子さんに対し、

繰り返し、今後のことはA子さんにお願いすると述べていた。

 

G県のH寺に、西川家の墓があり、B雄さんの父母と兄弟らが埋葬されている。

最近、A子さんの長男F介さんらがH寺を訪れ西川家の墓を確認した。

そこでは、西川家の墓地の敷地内に、B雄さんの手で、

新しい東山家の墓地区画が分割されていた。

生前、A子さんはB雄さんから、

「自分には子供が無く、西川家が途絶えてしまうので、姉さんに墓を守って欲しい。

義兄のE吉さんにもその援助を願いたい。」などと度々言われていた。

すなわち、B雄さんは、繰り返し、

西川家の墓その他祖先の祭祀を主宰すべき承継者として

A子さんを指定していたのである。

 

また、B雄さんが亡くなるまでの約5年間にわたり

B雄さんの介護を担当した「I在宅支援サービス」のJ所長は、

B雄さんから、直接、

「自分が亡くなった後のこと(お墓や、先祖を祀ること)については、姉A子さん夫妻に託したい」

という話をサービス中に何度も聞いていた。

 

B雄さんが祖先の祭祀を主宰すべき承継者として

A子さんを指定する意思を有していたことは、明白である。

 

10  しかし、南本C代及びD郎は、

亡西川B雄さんとの内縁関係、父子関係を主張し、

亡西川B雄さんの49日までという葬儀時の約束をも破り、

東山A子さんからの遺骨等の返還請求に応じなかった。

交渉の依頼を受けた当職から内容証明郵便等で、

南本C代及びD郎に請求しても、

同人らは、なかなか応答もしないで放置した。

ようやく交渉には応じたものの、

金銭請求をするばかりで、遺骨等の返還は拒否し続けた。

 

11  やむなく、東山A子さんは、

2012年9月、南本C代及びD郎を相手取って、

東京地方裁判所に遺骨等返還請求の訴訟を提起した。

訴訟では、南本C代及びD郎は、

C代の娘の結婚式に西川B雄さんが南本C代と共に結婚式に出席している古い写真

を提出するなどして内縁関係を主張し続けた。

 

関係者の尋問の後、2013年9月に判決が言い渡された。

判決は、

第1に「被相続人の指定」の有無につき、
「西川B雄に子はなく、…西川家の氏を称する者もいないという状況下において、B雄が本件墓地の一部を区分して原告夫婦(東山家)のための墓所としたことは、B雄が自己の亡き後の墓守を原告夫婦に託す意思を有していたことの表れといえる。さらに、B雄はA子及びその家族とは一定の交流があり、後述のとおりB雄とC代が内縁関係にあったとは認められず、他にB雄と特別な縁故を有する者があることもうかがわれないことなども考え合わせれば、……B雄は、祖先の祭祀を主宰すべき者として原告を指定したものと認めるのが相当である。」とし、原告の主張を認めた。

第2に「慣習」の有無についても、
「南本C代の娘の結婚式に西川B雄がC代と共に結婚式に参列したものの、他方、東山A子の子供らの結婚式に参列する際にはC代を伴っていないこと、B雄の晩年においても、C代やD郎は、B雄に対し生活上の援助をすることも、B雄の入院や介護等に関わることもなかったこと」を認定したうえ、
「C代とB雄とが婚姻の意思をもって夫婦共同生活を営み、内縁関係にあったとは認めることができない」と断じた。
そして、「B雄の死後、……相続人らは、遺産分割協議において、祖先の祭祀を主宰すべき者をA子と定めており、他にB雄と特別の縁故を有する者があったことはうかがわれないのであるから、慣習によっても、原告がB雄の祭祀主宰者となるべきである。」とした。

以上のとおり、判決は、原告の主張をすべて認め、

C代及びD郎に対し、亡B雄の遺骨、仏壇、位牌等の引渡を命じた。

 

12 一審判決を不服とするC代及びD郎は、東京高等裁判所に控訴した。

しかし、控訴審は一回で結審し、今や新年2月に判決が予定されるに至っている。

 

おわりに

A子さんは、B雄さんを一日も早く西川家の墓に納骨して、

A子さんに託したB雄さんの切なる願いに応えたいと思う。

今、A子さんは「事実は強い、負けるはずがない」として、

控訴棄却判決とその確定を冷静に待っている。

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